2006 Fiscal Year Annual Research Report
カイラルシグマ模型を用いた原子核に対する原子核構造と真空の効果の研究
Project/Area Number |
06J09058
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
為永 節雄 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 繰り込み理論 / カイラル対称性 / 線形シグマ模型 / 原子核構造 / 有限温度 / 非摂動論 |
Research Abstract |
カイラル対称性はハドロン物理学や素粒子物理学において重要な対称性の一つである。そのカイラル対称性を原子核物理においても取り入れることを目標にしている。 私はColeman-Weinbergの繰り込み方法を用いた質量項の無い線形シグマ模型を構築し、その模型の性質を研究してきた。線形シグマ模型は繰り込み可能な模型であるが、核子のone loopの繰り込みが行われた有効ポテンシャルは不安定であることが知られている。そこで負の質量項のない線形シグマ模型を考えると、カイラル対称性が量子補正(loopの寄与)により自発的に破れ、初めて安定なポテンシャルを作り出すことができた。またフェルミオンとボソンのone loopの寄与が約96%打ち消し合う機構があり、全体として「自然な」大きさの相互作用となっていることがわかった。 この模型を用いて、^<16>Oの原子核構造を考察する。通常の線形シグマ模型にベクター中間子を導入して原子核を記述すると、非圧縮率が大きくなりすぎるためにp波が広がりきれずに表面付近に局在する。そのため密度分布が実験結果とは異なる形で現れる。質量項の無い線形シグマ模型を用いると、密度分布は実験結果に近づき、波動関数の繰り込みが大きく影響を及ぼしていることがわかった。 また、カイラル対称性は有限温度中で回復するということも知られている。質量項の無い線形シグマ模型では、カイラル対称性はT=200MeV付近で回復し、パイ中間子とシグマ中間子の質量の大きさが逆転する領域が見られる。 これまでの議論はone loopの寄与に対して展開されている。次にtwo loopやさらに高次のloopの寄与を考える必要がある。また今の模型は強い相互作用に対する模型であるので、loopの寄与を非摂動論的に考えるべきである。そこでCornwall, Jackiw, and Tomboulis (CJT)の方法を用いて繰り込みを非摂動的に取り扱うことで、one loopの摂動計算と同様な代数的な式を導出でき、大きな結合定数や負の質量項の起源を理解することができた。
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