2006 Fiscal Year Annual Research Report
アジア太平洋戦争期における天理教の研究-「ひのきしん」運動と総力戦体制-
Project/Area Number |
06J09064
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永岡 崇 大阪大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アジア・太平洋戦争 / 天理教 / ナショナリズム |
Research Abstract |
現在天理教本部では、アジア・太平洋戦争は「革新」という一連の教義・制度改革として記憶されているが、天理教における戦争は教義・制度改革だけではなかったし、それ以前・以後の時代とも密接に関わっている。「革新」を「革新」以前からの連続性において捉え返すために、機関誌『みちのとも』を中心に、1908年に一派独立を実現した時期から、天理教の人びとと国家や帝国主義との関係を中心に検討してきた。独立後、原典が原典として機関誌などで解釈され始めたとき、それはすでに国家主義的な言説であったことを明らかにした。戦前の教義概念が形成されるにあたっては、国家権力の直接的/間接的な監視・管理など外的な要因が関係しているといえるが、天理教本部自身も、国家主義的・帝国主義的な主体としての自己を内面化していったのである。したがって、天理教本部や信者たちのより主体的な戦争協力の内実を問わなければ、天理教と戦争の間の関係性について批判的に再検討することにはならないということを示した。 また、天理教における戦争の問題を教義概念を軸に考察しようとする本研究にとっては、戦前から戦後にかけて天理教団の最高責任者であり続け、現行の教義を主導的に作りあげた二代真柱・中山正善の思想を明らかにする作業が不可欠である。そのため、彼が原典をどのように読み、教義形成を行っていったのかを検討した。正善の教義形成の基本方針は、教祖=「おふでさき」からの距離に基づくヒエラルキーの構築であった。それを支える正善の一貫した態度は、教義の根幹となる原典から、みき以外の他者の存在を徹底して排除しようとするものであり、史料批判によって正統的テクストを創出し、異端的なテクストを排除する。これはみきが直接書いたものの世襲的・科学的相続の作法というべきであり、教祖という単一の源泉へと収斂していく教義学であった。
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Research Products
(2 results)