2007 Fiscal Year Annual Research Report
アジア太平洋戦争期における天理教の研究-「ひのきしん」運動と総力戦体制-
Project/Area Number |
06J09064
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永岡 崇 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 天理教 / アジア・太平洋戦争 / 民衆宗教 / ひのきしん |
Research Abstract |
アジア・太平洋戦争における天理教の戦争協力は、多くの信徒たちが炭鉱や工場・農村などで増産活動を担った「ひのきしん隊」の活動に象徴される。この「ひのきしん隊」について、参加した信徒たちが活動のなかでどのような信仰ないし宗教思想を表すにいたったのか、日常的な信仰生活で培われた思考・行動様式と関わらせながら検討した。隊員たちの多様な経験を安易に一般化することはできないとはいえ、家族との離別や過酷な労働といった困難な状況を、信仰を鍛え直すための好機として捉えなおし、新たな宗教意識を獲得していくものが多かったといえる。他方で、戦後天理教の知識人たちがこうした「ひのきしん隊」の活動をどう評価してきたのかを検討し、天理教の語りでは戦時期に語られた隊員たちの声を拾うことなく、政府の要請にやむなく応じざるをえなかった出来事として、被害者史観を補強する材料としてしか扱われていないのではないか、という指摘を行った。宗教集団が戦争協力という過去を反省的に振り返る上では、どのような教義を信徒たちに提示し、それがどのような効果を生み出してしまったのか、そこでどのような信仰が培われていったのか、といった点にも向きあうことが不可欠であるように思われる。 また、天理教を含む新宗教を対象として、それらの宗教がもっていた国家権力にたいする対抗性・自立性を強調してきた諸研究を批判的に読み直し、これらが教祖たちの思想的独自性を強調する一方で、宗教的・信仰的な要素を軽視してきたことを指摘した。対象とする宗教の信仰的な側面を重視する必要がある一方で、先行研究が切り開いてきた、信仰者の社会との構造的対立を問題視する政治的な領域に真摯に応答する必要がある。これは、アジア・太平洋戦争期における天理教の歴史記述に際しても不可欠の視点である。
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Research Products
(3 results)