2006 Fiscal Year Annual Research Report
自由と治安の対立からみた大正デモクラシー期の政治思想
Project/Area Number |
06J09078
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺田 晋 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 正統性 / 近代 / 政治的コミュニケーション / 世論 / 大正デモクラシー |
Research Abstract |
本研究は、近代化がもたらす正統性の危機という観点から、20世紀最初の4半世紀の、いわゆる大正デモクラシー期における日本の政治思想を再検討するものである。本年度は、研究の理論的枠組みについての検討と、必要な資料の選定、および、それらの若干の収集、解釈とを予定としていたが、これに関しては計画通り終了した。当初は、チャールズ・テイラーやペーター・ワグナーらの、近代の両義性に着目した理論を参照する予定であったが、検討の結果、ユルゲン・ハーバマスの近代とコミュニケーション的理性をめぐる理論、ベルンハルト・ペータースの公共圏論、オトフリート・ヤーレンの政治的コミュニケーション論を中心に理論を構築することにした。近代社会における正統性の維持の上では、行政権力とも貨幣権力とも異なるコミュニケーション的権力が必要になるという彼らの視点が重要だからである。彼ら諸論と本研究のような歴史研究との接点を見出すためには、さらなる検討を必要とする。そのため、こうした理論的内容に関しては、次年度以降に公表する予定である。他方で、資料の選定、収集、解釈に関しては、すでに、二度の学会報告において、その成果の一部を公表してきた(2006年10月21日、社会思想史学会第31回大会、および、2006年11月10日、International Sociology Conference in East Asia)。両報告においては、20世紀初頭の日本において頻発した群集暴動を正統性の危機現象と捉えた上で、こうした出来事と、政治的コミュニケーションについての反省的知識としての世論をめぐる同時代の言説との関係を検討した。報告の内容に関しては、再考の上、次年度の早い時期に学会誌等において公表する予定である。
|