2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J09099
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前川 絵美 Osaka University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 炭酸ガス / 熱 / 蚊 / 標的認識 / 誘引 |
Research Abstract |
近年、匂いを感知するメカニズムの解明が急速に進んだことを背景に、吸血標的認識行動を呈する代表的な昆虫である蚊について、そのメカニズムが注目を浴びている。吸血標的認識行動とは、1)活性化、2)方向付け、3)吸血行動の3段階から成ると定義することができるが、これまでの研究は、様々な誘引要素に対する蚊の単純な移動量を評価したものであり、3段階の標的認識行動を明確に分けていない。つまり、吸血標的認識行動メカニズムを明らかにするためには、最終段階の吸血行動すなわち実際の吸血対象に到達した際に見られるタッチダウン行動そのものを定量化する必要がある。そこで申請者は、吸血標的認識における誘引要素の候補であるCO_2と熱に着目し、それらに対する認識行動を極めて高い精度でアッセイするための実験装置の開発を行った。擬似的吸血標的に対する誘引要素として、35℃に設定したペルチェ素子と、一定時間毎に噴出するCO_2を用いた。そして標的に対するタッチダウン行動を定量化するために、標的の両端にはレーザセンサーを設置した。また、擬似的吸血行動そのものに加え、蚊のバックグラウンド行動および餌に対する行動を同時に定量化できるようにセンサーを追加した。作製した実験装置を用いて蚊の擬似的吸血行動を検証した結果、この行動は未吸血のメスに特異的であり、オス、吸血後のメスには観察されなかった。さらに、CO_2あるいは熱源単独の条件では擬似的吸血行動は起こらず、両者の刺激が組み合わさることで初めて惹き起こされる行動であることが示唆された。次に、これらの行動に関わる器官を同定するために、各感覚器官の切断実験と、高速度カメラを用いた詳細な観察を行った。その結果、擬似的吸血行動とは、まず小顎髭によってCO_2が認識されそれによって蚊の行動が活性化し、次に吻によって熱源認識が惹き起こされるという連続的なシステムであることが示唆された。
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Research Products
(2 results)