2006 Fiscal Year Annual Research Report
中世文芸における花と自己変容-世阿弥能楽論を中心として-
Project/Area Number |
06J09236
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
岩倉 さやか 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師
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Keywords | 花 / 自己変容 / 世阿弥 / 能 / 謡曲 / 中世文芸 / 能楽論 / 無心 |
Research Abstract |
18年度は、10月に研究の場を九州大学から静岡県立大学に移した。 移動後は、博士号取得論文「花と自己変容-世阿弥能楽論研究-」(平成18年3月博士号取得)の書籍化を目指し大幅な加筆修正を行っている。特別研究員奨励費の申請時には18年度中に書籍化をする計画であったが、それを19年度以降に延ばした理由には二つある。一つ目は、県立大学での授業を通して、世阿弥の能楽論を理解するには、世阿弥作の謡曲における「花」の位置づけを探求することが不可欠であると考えるようになったためであり、二つ目は、能楽論と、修士論文で取り上げた俳論との文芸史的つながりを盛り込む方針を採ったためである。そこで、提出時には能楽論だけであった論文に、別章として謡曲論と俳論を附載する形で論文執筆を進めている。謡曲論では、世阿弥が花について言及している「桜川」「忠度」「班女」「頼政」「鶴」などを取り上げている。これらの作品の分析を通して、世阿弥作謡曲における「花」がシテの変容を象徴するものであること、その「花」は「古今和歌集」を範とする中古以来の雅文芸の伝統があって始めて成り立つものであることを論じている。また、俳論では、終始論文を書籍化した『俳諧の心』(ぺりかん社)の内容、すなわち支考俳論を採用するとともに、『去来抄』『三冊子』などの論にも言及している。この方針を取り入れた研究計画を作成、平成19年度科学研究費補助金(若手研究B)に申請し平成19・20年度の研究予算を確保した。当面は、博士論文の書籍化と静岡県立大学紀要第6巻第1号掲載論文の執筆とを中心に研究を続ける予定である。
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