2007 Fiscal Year Annual Research Report
Volterraの原理を満たさない生態系の力学系モデルのパーマネンスの研究
Project/Area Number |
06J09289
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今 隆助 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 捕食寄生者 / Leslie行列モデル / 構造化個体群モデル |
Research Abstract |
1.Leslie行列モデルのように内部構造を持った個体群モデルのパーマネンスを調べる際,Lotka-Volterra方程式のような内部構造を持たない生態系モデルに対して使えた数学的な手法をそのまま使うことはできない.しかしながら,Leslie行列がある特殊な非原始行列である場合には,モデルのダイナミクスを決定する写像を複数回反復させることによってできる合成写像が生態学でよく知られているKolmogorov方程式となる。本研究では,この性質を利用し,さらにKolmogorov方程式のパーマネンスを調べる際に有用である平均リアプノフ関数を用い,Leslie行列モデルのパーマネンスの必要条件を得た.この結果からコホート間の競争がコホート内の競争と比べて激しい場合,コホート間で競争排除が起こることを明らかにした.また,飽和形の捕食関数の導入はコホート内の競争を緩和させるため,コホート間の競争がコホート内よりも激しくなり,競争排除を導くことを示した.この結果はJournal of Mathematical Biology誌に掲載された.2.Nicholson Bailey型の宿主-捕食寄生者系は低次元であってもその数学的取り扱いが困難である.しかしながら,寄生能力が産卵数のみによって制限されている場合,ある変数を導入することにより,システムは部分的に単一の方程式に分解される.この性質を利用し,複数の捕食寄生者を含むシステムの大域漸近挙動を明らかにした.またこの結果を生物防除の観点から解釈し,複数種の捕食寄生者を導入するほうが,宿主の個体群動態をよりよくコントロールできることを明らかにした.この結果は,現在投稿中である.
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