2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外マトリックスによる歯の形態形成の分子機構の解明
Project/Area Number |
06J09340
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
湯浅 健司 九州大学, 歯学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 細胞外マトリックス / 基底膜 / ラミニン |
Research Abstract |
基底膜を構成する細胞外マトリックスの一つであるラミニンについて研究を行った。歯胚の発生初期段階で発現しているラミニンを同定した結果、エナメル形成前の基底膜に存在するラミニンのうち、歯原性上皮細胞が発現している分子はラミニンα5鎖を含むラミニンのみであり、その他のラミニン分子は歯原性間葉細胞あるいは、分化後期のエナメル芽細胞にのみ発現していることが明らかとなった。このことから、初期の歯胚発生過程における細胞増殖・分化誘導に重要なラミニンは、ラミニンα5鎖を含むラミニン10およびラミニン11であることが予想された。そこで我々はラミニンα5ノックアウトマウスを作成し、解析を進めた。そのマウスは胎生致死であり、歯に関しては咬頭形成異常が起こることが明らかとなった。 実際、歯原性上皮細胞をラミニン10およびラミニン11でコートした培養皿で培養した際には、その細胞増殖は他の1型コラーゲンやフィブロネクチンと比較して数倍以上もの細胞増殖活性を有することが明らかとなった。一方で、歯原性間葉細胞が発現するラミニン1およびラミニン2でコートした培養皿で培養した際には、歯原性上皮細胞の細胞増殖には全く影響を及ぼさないことが明らかとなった。この結果は、ラミニンα5鎖の欠損マウスの歯の表現系と一致している。このことから、ラミニンα5を含むラミニンは、歯胚の大きさの決定、つまり歯原性上皮細胞の増殖推進の為に必須の分子であることが明らかとなった。次にラミニンを介した細胞内シグナルを解析する目的で、ラミニンの受容体であるインテグリンの欠損マウスを用いた解析を行った。インテグリンβ1分子の欠損マウスは、胎児期に死亡してしまうため、上皮特異的にノックダウンする実験系を用いた。本マウスではエナメル芽細胞の分化が著しく抑制され、細胞の極性決定が遅延する結果が得られた。このことからインテグリン-ラミニンの相互作用が、エナメル芽細胞の分化に必須の相互作用であることが示唆された。
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