2008 Fiscal Year Annual Research Report
MAPK経路制御因子Sproutyの口腔癌における増殖/転移抑制機構の解明
Project/Area Number |
06J09343
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
武富 孝治 Kyushu University, 歯学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | Sprouty / Spred / SQUU-A,B / MAPK 経路 / リンパ行性転移 / LIVE-1 / VEGF-C |
Research Abstract |
Ras-MAPK経路は細胞増殖/分化を司る重要なシグナル伝達経路で、殊に癌においてその制御は大変重要である。今回、そのMAPK経路によって誘導されるNegative Feedback因子Sprouty/Spredの口腔癌における増殖/転移抑制機構に着目し、研究を開始した。 まず、同一患者から提供された口腔扁平上皮癌細胞株SQUU-A細胞株(非転移株)とSQUU-B細胞株(転移株)におけるSproutyおよびSpredのmRNAおよびタンパク質の発現を確認した。次にこのMAPK経路で誘導されるSprouty/Spredの癌細胞における影響を調べたところ、転移傾向を有するSQUU-B細胞においてその増殖活性をSprouty/Spredは顕著に抑制した。 次に口腔癌が高率にリンパ行性転移をすることが知られているため、現在、Sprouty/Spredを強制発現させた細胞における上清を用いて、リンパ管転移に関連するVEGF-C(血管上皮成長因子-C)の発現、ならびにMMP-2,9の発現をELISAを用いて測定し、癌の浸潤・転移におけるSprouty/Spredの作用について調べたところ、両者ともその発現がSprouty/Spredによって有意に抑制された。また細胞骨格に於けるSprouty/Spredの作用をwound healing assayを行ったところ、Sprouty/Spredを組み込んだSQUU-B細胞のmigrationは有意に抑制されていた。これらin vitroにおけるSprouty/Spredの作用をin vivoで調べるため、Sprouty/Spredをウイルスベクターに組み感染させたSQUU-B細胞を野生型マウスの舌縁に注入して、頸部リンパ節への転移の状態をHE染色ならびに免疫組織化学的解析を行った。その結果、Sprouty/Spredを組み込まない細胞を生着させたマウスは頸部リンパ節に転移していたのに対し、Sprouty/Spredを組み込んだSQUU-B細胞(Sprouty/Spred SQUU-B)を生着させたマウスの頸部リンパ節転移は有意に少なかった。また、注入した舌縁周囲のリンパ管新生もLIVE-1にて調べたところ、同じくSprouty/Spred SQUU-B生着マウスの方が少なかった。 以上の結果より、Sprouty/Spredファミリーは、扁平上皮癌の増殖活性を抑制するとともに、宿主に於けるリンパ管新生を抑制することにより、その転移も抑制することが判明した。
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