2006 Fiscal Year Annual Research Report
MAPK経路制御因子Sproutyの口腔癌における増殖/転移抑制機構の解明
Project/Area Number |
06J09343
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
武富 孝治 九州大学, 大学院歯学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | MAPK経路 / SQUU-A,B細胞 / Sprouty / Spred / ERK1 / 2のリン酸化 / リンパ行性転換 / VEGF-C |
Research Abstract |
Ras-MAPK経路は細胞増殖/分化を司る重要なシグナル伝達経路で、殊に癌においてその制御は大変重要である。 今回、そのMAPK経路によって誘導されるNegative Feedback因子Sprouty/Spredの口腔癌における増殖/転移抑制機構に着目し、研究を開始した。 まず、同一患者から提供された口腔扁平上皮癌細胞株SQUU-A細胞株(非転移株)とSQUU-B細胞株(転移株)におけるSproutyおよびSpredの発現を調べるため、SQUU-A,B各々の細胞を上皮成長因子(EGF)および線維芽細胞成長因子(bFGF)で刺激し、mRNAレベルでの発現を調べた。その結果、Sprouty2はSQUU-A,B細胞において、EGFとbFGF各々の刺激で同程度のmRNAが誘導された。また、Sprouty4はSQUU-A細胞では、EGF・bFGF両刺激においてその発現が誘導されたが、SQUU-B細胞ではEGF刺激においてのみ発現が誘導された。一方でSpred1(Sprouty-related EVH domain containing 1)はSQUU-B細胞においてのみEGFおよびbFGFで誘導され、SQUU-A細胞では誘導されなかった。 次にこのMAPK経路で誘導されるSprouty/Spredの癌細胞における影響を調べるため、まずhuman Sprouty2,Sprouty4,Spred1各々のPlasmid vectorをTAクローニングを用いて作成し、SQUU-A,B細胞に強制発現させ、EGF・bFGFで刺激して、MAPK(ERK1/2)の活性化およびAkt/PKBの活性化をwestern blotを用いて調べた。その結果、Sprouty2はSQUU-B細胞におけるERK1/2のリン酸化をbFGF刺激下において強く抑制した。一方でSQUU-A細胞およびAkt/PKBのリン酸化にはほとんど影響を与えなかった。また、EGF刺激においてもbFGF刺激の場合と同様、SQUU-B細胞のERK1/2のリン酸化のみ抑制した。Sprouty4の強制発現系においても同様の結果を得た。また、Spred1においてはEGFおよびbFGF刺激においてそれぞれ抑制効果を示し、特に転移株であるSQUU-B細胞でのみ発現が誘導されてくることから、その制御は転移抑制の点からも有用であると思われる。 次に口腔癌が高率にリンパ行性転移をすることが知られているため、現在、Sprouty/Spredを強制発現させた細胞における上清を用いて、リンパ管転移に関連するVEGF-C(血管上皮成長因子-C)の発現、ならびにMMP-2,9の発現をELISAを用いて測定し、癌の浸潤・転移におけるSprouty/Spredの作用について研究を進めているところである。
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