2006 Fiscal Year Annual Research Report
ネットワーク型企業における雇用と労働条件決定プロセス-労働者参加の保障を中心に
Project/Area Number |
06J09410
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小早川 真理 Mie University, 人文学部, 講師
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Keywords | 集団的労使関係 / 従業員代表制度 / ネットワーク型企業 |
Research Abstract |
平成18年度は、主としてネットワーク型企業における集団的労使関係システムのあり方について、フランス法との比較研究を行なった。これまでの日本の労働法理論では、労組法上の「使用者」概念も、一義的には労働契約上の使用者に一致し、それ以外の会社の使用者責任は、労働契約上の使用者に近い実態がある場合や法人格否認の法理が適用されるほどの支配関係がある場合に限り認められる。しかし、企業の組織形態がネットワーク化し、中核会社と他の構成会社が一定の統合性を保ちつつ、具体的業務は独立して活動する形態では、そのような使用者像では限界がある。こうした問題は、フランスでも企業内従業員代表制度の設置単位の問題として浮上した。フランスの企業内従業員代表制度の設置単位は、原則として会社である。しかし、分社化等の表面的な操作で制度の適用回避を図る企業が現れ、そうした意図を排除するために「経済的・社会的一体」の概念が導入された。この概念の当初の機能と射程は、日本の法人格否認の法理に近いが、しだいに制度の設置単位たるべき組織体を同定する基準へと変化した。その過程の分析から、制度を実施すべき法人格(責任主体)と、制度を実施すべき空間としての企業は乖離しうることが指摘される。 また、グループレベルの団体交渉・協約締結に関する理論分析も行なった。この議論は法人格のない会社集団でなされる事実上の労使合意の法的性質と当事者の決定を出発点とする。判例法理は「企業内交渉を妨げない限り」でグループレベルの労働協約を認めているが、その当事者が個々の構成会社であることも否定しない。ここでも労使関係が現実に展開すべき広がりと法的な責任主体との切断が見られる。 以上から、少なくとも集団的労使関係については、制度趣旨に適合する雇用の場を同定する考え方を導きうると思われる。この示唆から日本の法理論を再構築することは今後の課題である。
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Research Products
(3 results)