2006 Fiscal Year Annual Research Report
人工ピンニングセンター導入による高性能超伝導材料開発とピンニングメカニズム解明
Project/Area Number |
06J09437
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新海 優樹 九州大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超伝導 / ピンニングセンター / 薄膜 / 結晶成長 / ペロブスカイト / 酸化物 / APC / セラミックス |
Research Abstract |
本研究はAPC(Artificial Pinning Center:人工ピンニングセンター)導入による超伝導膜の特性向上を目的に行われている。 APC導入はここ1、2年で非常に良く行われている研究で超伝導体中に金属元素や他材料をドープして非超伝導部位を作りその部分をピンニングセンターとし超伝導特性を向上させる研究である。現在、我々はErBa_2Cu_3O_<7-δ>(ErBCO)にBaZrO_3(BZO)をドープすると、c-軸方向にピンニングセンターを持つ超伝導材料となることを見出している。これは薄膜内部においてBZO柱状に成長し、そのBZOロッドがピンニングセンターとして機能しているためと考えられている。しかし、BZOがロッド状に成長するメカニズムは分かっていない。そこで、本年度はBZOと同じ結晶性を持ち、格子定数が異なる材料をドープしその材料の特性を解析することにより、BZOが柱状に成長した原因とそれが超伝導特性に与えている影響について解明することを目的に行った。 超伝導体としてはRE-123系超伝導体であるErBCOを用いた。また、超伝導へ導入する非超伝導材料としては、BaCeO_3(BCO)、BaTiO_3(BTO)、BaWO_4(BWO)を用いた。膜作成はArFエキシマレーザーによるPLD法により作成した。簿膜基板にはErBCOと格子整合性の良いSrTiO_3(100)を用いた。 結果として、全てのドープ材料でErBCO膜の大きな超伝導特性の向上は見られなかった。しかし、BWOのJCの印加磁場角度依存性を調べたところ、BZOほどではないがc-軸方向にピンニングセンターを持っていることが確認された。そこで、BWOの膜内を透過型電子顕微鏡(TEM)により詳細に観察したところ、BZOをドープしたErBCOと同様の柱状構造物が成長していることが確認された。そこで、その構造物の解析を行った。 解析にはTEMの制限視野電子回折とEDSによる元素マッピングを用いた。その結果、柱状構造物はEr、Ba、W、Oで構成されていることが分かった。ドープしたBWOにはErが含まれていないのでこのナノロッドは周辺のErBCO相からErを供給していることが考えられる。また制限視野電子回折の結果から柱状物質はペロブスカイト構造を有している可能性が高いことがわかった。以上の情報から、この物質はBaEr_<0:67>W_<0:33>O_3(BaErWO)であると推測した。 以上の研究結果から、ピンニングセンターとして機能するロッドを持つErBCO膜をPLD方で作製するためには、膜内部にペロブスカイト構造を持つ非超伝導材料を導入することが重要であることがわかった。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Characteristics of ErBa_2Cu_3O_<7-δ> films with BaWO_4 doping2007
Author(s)
Y.Shingai, T.Numasawa, M.Mukaida, R.Teranishi, R.Kita, A.Ichinose, S.Horii, Y.Yoshida, K.Matsumoto, S.Awaji, K.Watanabe, A.Saito, K.Yamada, N.Mori
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Journal Title
Physica C (in press)(to be published)