2006 Fiscal Year Annual Research Report
水素利用システム用材料の疲労特性に及ぼす水素ガス雰囲気の影響に関する研究
Project/Area Number |
06J09458
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河本 恭平 九州大学, 大学院・工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 金属疲労 / 水素ぜい性 / 疲労き裂発生 / 疲労き裂伝ぱ / フラクトグラフィー / オーステナイト系ステンレス / 水素の可視化 |
Research Abstract |
1.オーステナイト系ステンレスSUS316L鋼の疲労き裂伝ぱに及ぼす水素雰囲気の影響を調べるために,大気中,1MPa水素中および1MPa窒素中の3環境で疲労試験を行った.また,比較対象としてSUS304鋼を調べ,水素の影響の鋼種間比較を行った.その結果,SUS316L鋼の疲労き裂伝ぱ速度は,SUS304鋼と比較すると程度こそ小さいものの,水素雰囲気の影響により加速することが分かった.また,脆性ファセットの形成は疲労き裂伝ぱ加速の主な要因ではなく,破面の大部分を占める残りの延性的破面の中に加速の支配的機構があることを明らかにした. 2.オーステナイト系ステンレスSUS316L鋼の平滑材疲労限度に及ぼす水素ガス雰囲気の影響を,微視的停留き裂の存在に注目して検討した.その結果,本鋼種の平滑材疲労限度は,大気中および水素中の双方で疲労き裂の停留限界で決まっていることが明らかになった.また,その疲労き裂停留限界は,水素により高くなることが分かった.次に,疲労限度直上における疲労特性を調べたところ,水素中では大気中と比較して,発生寿命は長く,伝ぱ速度が高くなる結果を得た. 3.オーステナイト系ステンレス鋼の疲労き裂先端近傍における水素濃度分布の適切な測定方法を確立する目的で,水素中で伝ぱさせたSUS304鋼の疲労き裂先端近傍に対して,二次イオン質量分析法および水素マイクロプリント法の適用を試みた.分析上の問題点を踏まえての二次イオン質量分析により,疲労き裂先端近傍の塑性域には平滑部と比較して高濃度の水素が存在することが可視化できた.一方で,疲労き裂近傍における水素濃度分布を定量分析するためには,エッジ効果に起因する疲労き裂面に付着した水蒸気の誤検出を低減する必要性も示された.また,水素マイクロプリント分析の結果との比較より,この水素は材料外へは放出されにくい水素であることが分かった.
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Research Products
(2 results)