2006 Fiscal Year Annual Research Report
動的ならせん構造を有する新規誘導適合型不斉触媒及び機能性分子の開発
Project/Area Number |
06J09504
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石塚 賢太郎 九州大学, 先導物質化学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ビナフトール / 動的不斉軸 / 水分子鎖 / 自己組織化 / キラルチューブ |
Research Abstract |
光学活性なビナフトールをその3位で直接連結させたオリゴマーについて、1〜8量体の各種スペクトル測定を行った。UV/visスペクトルでは各オリゴマーのモル吸光係数とオリゴマーの量数との関係をプロットしたところ5量体以降で明確な変化が見られ、またCDスペクトルでも5量体以降で260nm付近に分裂型のコットン効果が新たに観測された。定性的ではあるが、これらの実験結果はビナフトールオリゴマーが少なくとも5量体以上においてらせん状の構造をとっていることを示唆するものである。 また上記の動的構造に関する知見に加えて、X線単結晶構造解析を用いることによりビナフトール3量体の静的な構造に関する知見を得ることにも成功した。3量体の単結晶はジクロロメタン/ペンタン混合溶媒より得られ、再結晶溶媒に水を用いていないにも関わらず、非対称単位は2分子のビナフトール3量体と複数の水分子によって構成されていた。ビナフトール3量体は分子内の2つの動的不斉軸がS配置に固定されヒドロキシル基が内側を向いた半円型の構造となっており、これが交互に重なる形で自己組織化されることにより全体としてキラルなチューブ状構造を形成することが分かった。そして、チューブの親水性内孔には水分子が枝分かれの無い一本鎖として包摂され、それらはすべて右巻きのらせん構造をとっていた。このような水分子の配列は生体内でのプロトン移動のモデルとなり得るため極めて重要であるが、本結晶は空気中で即座に風解してしまうという問題があったため、より安定な結晶を得るためにビナフトール3量体の各種誘導体の合成を行い、それらの結晶化を現在検討中である。またビナフトール2量体を用いて、動的不斉軸を有する新規なブレンステッド酸-ルイス塩基二機能性不斉触媒を開発中である。
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