2006 Fiscal Year Annual Research Report
アポトーシスによる癌の増殖・転移の制御と分子標的療法の開発
Project/Area Number |
06J09582
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川久保 友世 九州大学, 大学院・歯学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カテプシンE / 癌 / アポトーシス |
Research Abstract |
本研究では、エンドリソソーム性アスパラギン酸プロテアーゼであるカテプシンEの発癌、および癌の増殖・転移における役割について解析を行った。 まず、in vitroにおける解析から、癌細胞が本酵素を産生・分泌すること、ならびに癌綱胞培養上清中には、癌細胞自身を細胞死に導く分子が含まれていることを証明した。さらに、癌細胞培地に精製カテプシンEを添加すると、癌細胞が濃度依存的にアポトーシスに誘導されることを見い出した。このカテブシンEによる作用は癌細胞特異的であり、正常細胞にはほとんど影響が認められないこと、また、他のエンドリソソーム性プロテアーゼのカテプシンB、L、Dではアポトーシスは観察されないことなどを明らかにした。このアポトーシス誘導機構には、カテプシンEの酵素活性が必須であることを、アスパラギン酸プロテアーゼの阻害剤であるペプスタチンや酵素活性部位に変異を入れた変異型カテプシンEを用いることで証明し、さらに、カテプシンEによる癌細胞特異的アポトーシスが癌細胞特異的アポトーシス誘導因子として知られるTRAIL(TNF-related apoptosis-inducing ligand)を介したものであることを、TRAIL抗体を用いて明らかにした。 さらに、in vitroの紬胞培養系で得られたカテプシンEによるアポトーシス誘導効果を、動物モデルを使ったin vivoの系で明らかにした。まず、ヌードマウス癌移植片へ精製カテプシンEを局所投与し、悪性腫瘍の増殖・転移能を経時的に調べた。カテプシンEの局所投与で、癌移植片の増殖は抑制された。さらに、宿主側の本酵素の影響をみるため、カテプシンEノックアウトマウス、カテプシンEトランスジェニックマウス、および同系正常マウスに、マウスメラノーマ細胞を皮下移植し、原発巣での増殖能、肺への転移率、さらに致死率を解析した。宿主側カテプシンEの発現量に比例して腫瘍増殖・転移抑制効果が観察された。 また、カテプシンEノックアウト経産雌マウスに90%以上の確率で乳腺癌が発症することを見い出し、この癌の組織型を明らかにした。 以上のことから、カテプシンEが発癌のステップ、および癌の増殖・転移のステップにおいて、負の制御因子(癌抑制因子)として働いていることを明らかにした.
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Research Products
(1 results)