2006 Fiscal Year Annual Research Report
沖合域と沿岸域の相互作用---富山湾を実験域とした海況予測の基礎研究
Project/Area Number |
06J09608
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中田 聡史 九州大学, 応用力学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 数値計算 / 湧昇流 / 対馬暖流 / 富山湾 / 大陸棚 / 時計回りの渦 |
Research Abstract |
本研究では、湾スケールの海況予測研究のために、富山湾をモデル海域とした沖合・沿岸域の相互作用についての研究を行った。まず、九州大学応用力学研究所が開発した海洋大循環モデルRIAMOMを用いて、富山湾とその沖合い海域における現実的な流動場や海洋環境の再現実験を行った。シミュレーション結果と観測知見を比較すると、富山湾に特徴的な湾口通過流や夏〜秋にかけて湾口に発生する時計回りの渦が計算結果にもみられ、数値モデルが富山湾の流動パターンや海況の季節変化を正確に再現していることが分かった。この計算結果を解析した結果、この渦の生成には春〜秋にかけて湾内で発生する湧昇流が必要であることが分かった。時計回りの湧昇流発生メカニズムを説明するために、まずはRIAMOMの計算結果から湧昇流発生の力学エッセンスを抽出し、理想的なモデルによって力学機構を調べた。その結果、沖合いを流れる対馬暖流が春から秋にかけて強化される時に、湧昇流が鉛直循環の一部として発生していることが分かった。RIAMOMで表現されたこのような季節変化は、年ごとに大きく変動すると予想されたが、富山湾周辺ではその経年変動成分が他の海域よりも小さかったために、流動場の平均的な海況像が抽出できたと考えられる。さらに、上記の湧昇流は富山湾だけでなく日本海側の沿岸全域で季節的に発生しており、ほぼ同一の発生メカニズムに支配されているという予想以上の結果が得られた。このように日本沿岸域では対馬暖流と湧昇流によって沖合と湾内が密接に相互作用していることが分かった。この結果は、沖合域と沿岸域との相互作用に一つの物理的な法則性があることを示唆している。これらの法則性が対馬暖流のような沿岸境界流の流れる他海域でも適用できると考えている。
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