2007 Fiscal Year Annual Research Report
インドモンスーンと古カトマンズ湖の第四紀古気候・古環境変動の研究
Project/Area Number |
06J09621
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 辰弥 Kyushu University, 大学院・比較社会文化研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 珪藻化石群集 / 古カトマンズ湖 / 中-後期更新世 / インドモンスーン変動 / ネパールヒマラヤ / Thalassiosira inlandica sp. nov. / 多様性 / 湖水位変動 |
Research Abstract |
過去60万年間のインドモンスーン変動や古カトマンズ湖の環境変遷,またそれらと珪藻群集の推移の関係を明らかにするため,中央ヒマラヤ・カトマンズ盆地のRabibhawan地点で掘削された全長218mの湖成堆積物のコア試料に含まれる化石珪藻を50cm間隔で分析し,その成果をまとめた. 1.Rabibhawanコアの44属115種(浮遊性23種;底生92種)の化石珪藻のデータベースを完成させた.また新種のThalassiosira inlandicaとその近縁種を,形態形質の詳細な分析結果に基づいて比較検討し,記載論文を公表した. 2.共同研究者の花粉分析によるRabibhawanコアの乾湿変動記録を,地球規模の気候変動の標準記録であるSPECMAPδ^<18>O stackにチューニングし,過去60万年間のコア深度-年代モデルを構築した. 3.上記の年代モデルに基づき,古カトマンズ湖の珪藻化石群集の推移記録を日射量やインドモンスーンの変動記録と比較検討した.その結果,約60〜30万年前には,氷期-間氷期間の日射量の較差が小さかったことが原因で,夏のインドモンスーンによる降水量は比較的多く,古カトマンズ湖の水位は高く維持され,固有の珪藻であるPuncticulata versiformisとCyclotella kathmanduensisが大繁茂していたことが分かった.一方,約30〜1.2万年前には,地球軌道要素の歳差運動に起因する日射量の約2万年周期の変動に同調してモンスーン降水量が変動し,湖水位も上昇下降を繰り返したため,浮遊性珪藻の生産量や群集組成,さらに多様性(種数や均衡性)が約2万年毎に大きく変化していたことが分かった.但しこの期間には,底生珪藻群集の多様性はほとんど変化しておらず,環境変化(特に水位変化)に対する適応戦略が浮遊性群集とは異なっていたことが分かった.
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Research Products
(4 results)