2007 Fiscal Year Annual Research Report
青色光受容体フォトトロピンのリン酸化反応を介した情報伝達機構の解明
Project/Area Number |
06J09625
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 晋一郎 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 青色光 / 光受容体 / リン酸化反応 / 気孔 |
Research Abstract |
フォトトロピンは植物特有の青色光受容体で、シロイヌナズナにおいて光屈性、葉緑体運動、気孔開口等の青色光応答を制御する。青色光を受容して活性化したフォトトロピンは、自身のキナーゼドメインにより自分自身をリン酸化する「自己リン酸化」を示す。ところが、シロイヌナズナのフォトトロピンの自己リン酸化部位は全く同定されておらず、自己リン酸化の生理学的意味も不明であった。本研究では、質量分析等によりシロイヌナズナphot1の生体内の自己リン酸化部位を8箇所同定した。同定したリン酸化部位は、これまでにムギのphot1で明生体内の自己リン酸化部位を8箇所同定した。同定したリン酸化部位は、これまでにムギのphot1で明らかにされていたN末端領域とHingel領域以外に、キナーゼドメインとC末端領域でも見つかった。これらの部位のリン酸化の機能を明らかにするため、リン酸化されるSerとThrをリン酸化されないAlaに置換し、phot1phot2二重変異株に導入した。このような変異phot1を発現する植物において、青色光応答が正常に誘導されるかどうか調べた。8箇所のリン酸化部位の中で、キナーゼドメインのアクティベーションループに位置する851番目のSerのリン酸化のみが生理応答の誘導に必要であった。このSerは、青色光に依存して速やかに自己リン酸化され、暗黒下で脱リン酸化された。以上の結果から、青色光に依存したphot1の自己リン酸化が下流への情報伝達に必須であることを示した。 この研究の成果は、フォトトロピンの発見につながった「自己リン酸化」反応の生理学的意味を解明できたことと、フォトトロピン分子の活性化メカニズムの理解にも重要な情報を提示したことである。
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Research Products
(5 results)