Research Abstract |
平成18年度には,関係性の中に拓かれるユーモア生成メカニズムを解明するために,演者と観客の相互作用という観点から以下の点を実証的に明らかにした. 第一に,演者からの働きかけに注目し,演芸におけるユーモア生成には,ユーモア刺激(演題)の論理の流れだけではなく,演者の演じ方のレパートリ(語りの方略)が影響することを明らかにした. 第二に,演者と観客の関係性に注目し,これを客観的に判断するための指標として,身体運動の協調が利用できることを指摘し,協調運動の定量化の妥当性・信頼性を検討した.これを踏まえ,協調運動を指標とした演者と観客との関係性が,実際の演芸場面においてどのように機能しているかを検討する実験を行った.ここでは,演者と観客との関係システムが,ユーモア生成に影響することを明らかにした.さらに,観客が演者に先行するような関係性が生起している演題の後半で,よりユーモアが引き起こされていることが示され,演者と観客との関係システムの様相によって,ユーモア生成への影響も異なることが示唆される. 第三に,これらの現象を説明していくために必要なユーモア生成プロセスをモデル化し,検証した.共分散構造分析を用いて,ユーモア生成モデルのモデルの信頼性と妥当性が示された.この結果は,現在発表を予定している. これまで得られた知見を,より精緻に検討していくためには,オンゴーイングに観客が感じたおもしろさを計測する必要がある.このために,ユーモア・メータを製作し,評定の信頼性と妥当性を検討する予備実験を実施した.平成19年度には,このユーモア・メータを用いて演者と観客との関係システム,および,観客と観客との関係システムがユーモア生成プロセスにおいてどのように機能しているのかを検討する実験を予定している.
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