2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J09648
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野村 亮太 Kyushu University, 人間環境学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | ユーモア / 動的理解精緻化理論 / 認知と情動 / 熟達化 / 演芸(落語) |
Research Abstract |
本年度は,関係性の中に拓かれる(コミュニケーションの参加者同士の相互作用から生成される)ユーモアが生成されるメカニズムを,理論的・実証的に検討した。コミュニケーションの参加者同士の相互作用から生成されるユーモアを説明するための動的理解精緻化理論を提唱した。動的理解精緻化理論とは,端的に言えば,社会的文脈に埋め込まれた動的な精緻化手がかりが再帰的精緻化過程を延長・短縮することで,ユーモアの量を増大・減少させると仮定する理論である.この理論は,ユーモアの生成条件とユーモアの量の規定因を次のように想定している。1.ユーモアの生成条件は,活動志向的な心的状態でのやりとりが保証された社会的文脈において,感覚的不適合を知覚することである。2.生成されるユーモアの量は,再帰的精緻化過程と覚醒水準によって規定される。3.ユーモアの量と比例する再帰的精緻化過程にかけられる時間は,社会的文脈に埋め込まれた動的な精緻化手がかりによって延長・短縮する。社会的に埋め込まれた動的な精緻化手がかりとして機能するものとして,演者-観客系においては,語りの方略と呼ばれる演者の演じ方の工夫が,また,観客-観客系においては,他の観客の笑い声や身体の動きが考えられる。動的理解精緻化理論は,従来の研究が,ユーモアを個人内に生起し,内的過程(情報処理や生理的な反応)に"閉じた"情動として扱ってきたのに対して,状況や他者との関係性の中で生成されていく"開かれた"情動として捉えている点で新たな視点を与えるものである。この成果は,心理学評論に発表された。
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Research Products
(7 results)