2006 Fiscal Year Annual Research Report
フルオロアルキル系高分子の精密分子設計による表面機能性制御
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06J09664
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
本田 幸司 九州大学, 先導物質化学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高分子薄膜 / 濡れ性 / フルオロアルキル基 / 動的接触角 / 分子鎖熱運動性 / 水平力顕微鏡 / 表面構造の再編成 |
Research Abstract |
本研究は、環境対応型の新規な短鎖フルオロアルキル基(R_f基)含有化合物の設指針の確立を目的としており、これまでの研究成果より、濡れ特性と分子鎖熱運動性には密接な関係があることが明らかとなっている。しかしながら、その分子鎖熱運動性に関して直接評価するのは至っていなかった。そこで本年度は、これまでの研究で用いてきたポリ(フルオロアクリレート)(PFA)のα位メチル基が挿入された、ポリ(フルオロアルキルメタクリレート)(PFMA)薄膜の濡れ特性と表面分子鎖熱運動特性との関係を、温度可変の動的接触角、X線光電子分光(XPS)測定、水平力顕微鏡(LFM)測定による評価を検討した。 PFMA薄膜の動的接触角を評価したところ、PFAではR_f基の鎖長が短いものではR_f基が結晶化していないためその分子鎖熱運動性が高いために水の接触による表面構造の再編成により機水性が低下するが、PFMAにおいてはR_f基が短いものでもPFAに比べて高い撥水性を示した。これは、a位にメチル基が挿入されたことで主鎖が剛直になり、その結果R_f基の分子鎖熱運動が抑制されたためであると考えられる。そのことを検証するために、動的接触角の温度依存性を評価したところそれぞれの試料である温度を境にして急激な接触角の低下が確認された。XPS測定により表面の化学組成の温度依存性においても、接触角の低下する温度において、表面の化学組成の変化が確認された。この結果は、水の接触による表面構造の再編成を示唆するものであり、これらの変化が生じる温度以上において表面の分子運動性が高くなっていると考えられる。さらに、表面の分子運動性を温度可変のLFM測定により評価したところ、接触角および表面の化学組成が変化する温度において表面のガラス転移温度(T_g)が観測された。以上の結果より、濡れ特性には表面の分子鎖熱運動性が深く寄与していることが明らかになった。
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Research Products
(3 results)