2006 Fiscal Year Annual Research Report
竜巻発生の数値シミュレーション:下層初期渦の形成・強化メカニズム
Project/Area Number |
06J09713
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
下瀬 健一 九州大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 気象 / 大気力学 / 数値シュミレーション / 竜巻 |
Research Abstract |
我々は,現実場を初期値・境界値とした超高解像度の数値シミュレーションを行い,竜巻発生時における下層初期渦の形成・強化メカニズムの解明を目指している.今現在,2004年6月27日に佐賀県で梅雨前線に伴い発生した事例を解析中である.使用した数値モデルは米国のペンシルベニア大学と国立大気研究センターが開発した雲解像メソスケールモデル(MM5)で,初期値・境界値には客観解析データ(MANAL)を用いた.観測データとの比較から再現性を確認した後に構造や発生過程を力学的に調査した. 再現結果を観測データと比較し,スーパーセル型の擾乱が発生時刻・位置も含めて非常によく再現されていることを確認した.この再現データを基に竜巻の構造などの解析を行った.再現結果は過去の観測事実と一致する構造的な特徴を持っていた.構造的な特徴は以下のとおりである;1)非常に強く発達した渦が凝結物を巻き込む構造で水平風は37m/sまで達する,2)地表付近で鉛直渦度は最大となり値は0.5/sを超える.これらの値は竜巻の閾値を越えており,竜巻本体の再現に成功したといえる. 次に,再現された竜巻本体の形成・強化メカニズムを力学的に解析した.その結果,竜巻に発達する下層の初期渦の形成メカニズムには以下の2通りあることが確認された:1)水平風のシアによる渦形成,2)傾圧的に形成された水へ渦のティルティングによる渦形成.後者の渦形成メカニズムはスーパーセル型の擾乱によって引き起こされる竜巻の渦形成において重要とされているが,前者はこれまでスーパーセル型でない擾乱において重要とされており,この事例ではその2つの形成メカニズムが組み合わさった形となっていた。 スーパーセル型の擾乱は竜巻を引き起こす原因として知られているが,そのすべてが竜巻を引き起こすわけではない.つまり,竜巻発生には何らかの付加的な要因が必要であり,今回の事例では,水平風のシアによる渦形成が竜巻の発生に大きく寄与したことで発生したと考えられる.このような付加的な要因についての詳細はまだよくわかっておらず,この結果はその付加的な要因を理解する上で重要な結果となりうる.
|
Research Products
(2 results)