2008 Fiscal Year Annual Research Report
森林汚染モニタリングにむけた新規高感度センサーの開発
Project/Area Number |
06J09748
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村上 修一 Kyushu University, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 微量成分分析 / ラマン分光 / ナノ構造 / 残留農薬 |
Research Abstract |
平成20年度3年目の研究成果として、まず金蒸着基板の改良を行った。単分子膜であるAPTMSを用い、金蒸着前に単分子膜層をガラス基板に形成させ、その後金蒸着を行った。この基板をもちいて、塩水中(900ppm)のピリジン溶液の測定を行ったところ、APTMS処理を行っていない基板の場合、金蒸着が剥れ測定できなかったのに対し、APTMS処理基板では、純水と変わらないピリジンのラマンピークが認められた。つまり金蒸着基板にとって弊害であった塩水中での増強測定に成功した。このことから溶出した農薬等について、河川の上流だけでなく、塩分濃度の高い下流においても増強測定を可能にし、本手法の有効性がさらに広がる結果となった。 残留農薬については、フェニトロチオン・カルバリル・パラコート・アセタミプリド・ブラストサイジンS塩酸塩・アトラジンの計7種類の微量成分測定に成功した。そのうち4種類(アセタミプリド・ブラストサイジンS塩酸塩・アトラジン)においては、初めて高感度測定に成功した。ラマンピークの帰属から、P=S振動、NO_2振動、C=C振動およびC=N振動領域が増強を起こしていることがわかり、今後、増強の可能性のある農薬を探索する際の指標になると考えられる。また、今回増強測定に成功した農薬は、ビピリジウム系・有機リン系・カーバメイト系・トリアジン系・ネオニコチノイド系と農薬の分類においても多岐にわたるため、農薬の種類に問わず、同じ測定方法にて高感度検出が可能であるともいえ、様々な農薬について新規高感度センサーの効果が証明された。 さらに、河川水中での残留農薬成分同時検出の検討も行った。実際の河川水を用いて、前述の増強が確認された農薬を混合して測定を行った。その結果、複数農薬の同時検出および分類に成功した。このことから、本研究課題の目的は達成されたといえ、今後、森林汚染モニタリングのための新ツールとしての利用が期待される。
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