2007 Fiscal Year Annual Research Report
視覚系ニューロンの生理学的特性に基づいた新しい顔表情認知モデルの構築
Project/Area Number |
06J09754
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中島 大輔 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 顔・表情認知 / 空間周波数フィルタリング / 大細胞系・小細胞系 / 事象関連電位 / P1 / N170 / N270-330 / N330-390 / 等輝度 / 快表情 / 機能的MRI |
Research Abstract |
視覚系のニューロンの特性に基づき、ヒトの大細胞系(粗い形態視)と小細胞系(細かい形態視)をできる限り選択的に刺激できる低空間周波数顔刺激(LSF)と高空間周波数顔刺激(HSF)を画像工学的に作成し、事象関連電位(ERP)を用いて顔と表情認知の脳内処理過程を電気生理学的に解析した。その結果、潜時約100ms(P100)で顔の全体処理(大細胞系の処理に対応)、潜時170ms(N170)で顔の輪郭や細部情報(小細胞系の機能に対応)を検出することが明らかになった。 表情については、潜時270-310ms(N270-310)でポジティブ(喜び)とネガティブ(怒りと恐怖)間の表情弁別が大細胞系の機能に則して大まかに行われ、引き続いて潜時330-390ms(N330-390)においてはネガティブ表情同士(怒り対恐怖)の区別が小細胞系の機能に基づき詳細に行われることを明らかにした。 さらにP100成分は視覚刺激の輝度やコントラストに鋭敏に影響される。そこでこの要因を排除するため、等輝度の顔画像刺激を作成した。その結果、等輝度顔刺激ではP100が出現したのに対し、等輝度家画像ではこの成分が検出されなかった。この結果はP100成分が顔刺激に対して特異性もしくは頑強性をもっていることを示している。顔の認知にはこれまでN170が重要といわれていたが、それよりも70 ms早く輝度情報に依存しない特異的顔処理が行われていることが明らかになった。 加えてこれまで注目されていなかった快表情の脳内の詳細な賦活部位を確定するためにLSFとHSF喜び表情に対して機能的MRI(fMRI)を記録した。その結果LSF喜び顔に対して扁桃体と左上側頭溝の賦活が明瞭であった。これにより快表情認知ではLSP情報が重要性であることが分かった。
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