2007 Fiscal Year Annual Research Report
反応性有機金属ポリマーに包摂された白金触媒の開発とその触媒反応への応用
Project/Area Number |
06J09773
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
花田 汐理 Kyushu University, 先導物質化学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 遷移金属触媒 / ヒドロシラン / 隣接基効果 / アミド |
Research Abstract |
本年度は特異な構造を持つヒドロシランを用いることで初めて達成される遷移金属触媒を用いた官能基変換の開発を主な目的として研究を行った。ヒドロシランは有機合成においては有用な還元剤として知られ、アミド化合物のようなカルボニル化合物はヒドロシランによって還元されることが期待される。しかしながらアミド化合物、特に窒素上に活性プロトンを有する二級、一級アミドはヒドロシランに対する反応性が低いためこれまでその反応の報告例はわずかに数例であった。これに対し、本研究では高いSi-H基の活性化能を有するアセナフチレン配位子を有するルテニウム三核錯体を触媒とし、さらに分子内に複数のSi-H基が存在するヒドロシランを用いると反応が顕著に加速され、これらの反応を達成できることを見出した。さらに、このようなヒドロシランを用いた場合、中間体の構造によってはシロキサンなどの小分子の脱離反応が還元反応に優先して起こり、一級アミドから形式的な脱水反応によりニトリル化合物が選択的に生成するなどヒドロシランが必ずしも還元剤として働かないことを見出した。この反応は通常、五酸化二りんのような強酸性の脱水剤を必要とする一級アミドの脱水反応がヒドロシランという温和な反応剤を用い、中性条件下で進行するため、新規なニトリル化合物の合成法として有機合成的に期待される。さらに注目すべきは、本反応では一級アミドに対して還元剤であるヒドロシランを作用させているにもかかわらず、不飽和結合の還元が一切起こらず、脱離反応のみが進行しているという点である。この事実は遷移金属触媒によって活性化されたヒドロシランは種々の不飽和結合に付加し、還元する性質があるという従来の常識を覆すものであり、還元を伴わないヒドロシランによる新たな官能基変換反応の開発の可能性を示唆するものであるという点で重要である。
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Research Products
(5 results)