2008 Fiscal Year Annual Research Report
反応性有機金属ポリマーに包摂された白金触媒の開発とその触媒反応への応用
Project/Area Number |
06J09773
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
花田 汐理 Kyushu University, 先導物質化学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヒドロシラン / ルテニウム触媒 / 還元 / シリルカチオン等価体 / 触媒反応 |
Research Abstract |
本研究は白金錯体を始めとする遷移金属化合物を触媒としてヒドロシランによる種々の官能基変換反応の開発を試み、これによって(1)有用かつ新規な有機合成反応の開発、および(2)反応におけるヒドロシランの構造がもたらす効果の解明をめざすものである。具体的には特に、用いるヒドロシランの構造的な特徴として、反応部位であるSi-H基が近い距離に2つ以上並列する構造を有するヒドロシランが従来の電子的・立体的効果では説明できない特異な効果を反応に及ぼすことに注目し、(1)従来のヒドロシランではなしえないタイプの官能基変換反応の開発、および(2)反応機構の解明、さらには(2)で得られた知見を新たな官能基変換反応へフィードバックし、更なる新規有機合成反応の開発指針を得ることを目的としている。本年度は上述の研究目的(1)に主に主眼を置き、研究を実施した。すなわち、特定の遷移金属触媒の存在下で一級アミドとヒドロシランを反応させるとアミドの還元反応ではなく脱水反応が進行し、各種ニトリル化合物の効率的な合成法となりうることを見出した(Eur.J.Org.Chem.2008,24,4097)。また、tert-ブチルカーバメートのような安定なtert-ブチルカチオンが脱離しやすい基質にヒドロシランを作用させると、これらの脱保護反応が温和な条件下で速やかに進行することを見出した。本反応は種々の構造を有するtert-ブチルカーバメート、tert-ブチルエステル、さらにtert-ブチルエーテルからのtert-ブチル-酸素結合の開裂反応に適応可能であった。反応機構的には、遷移金属化合物の構造によってはヒドロシランがシリルカチオン性の強い振る舞いをしていることが強く示唆される。これはヒドロシランの関与する遷移金属触媒反応において広く受け入れられているヒドロシランの酸化的付加→挿入→還元的脱離という触媒サイクルからは説明できない新しい反応性を見出すことに成功したものである。
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Research Products
(3 results)