2006 Fiscal Year Annual Research Report
反応性有機金属ポリマーに包摂された白金触媒の開発とその触媒反応への応用
Project/Area Number |
06J09773
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
花田 汐理 九州大学, 先導物質化学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 遷移金属触媒 / ヒドロシラン / 隣接基効果 |
Research Abstract |
我々はこれまでに、高分子状のヒドロシランであるポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)と種々の遷移金属触媒により、温和な条件で三級アミドの還元反応が進行するとともに、反応残渣が副生する不溶性のケイ素樹脂にすべて閉じ込められるというきわめて画期的な反応手法を見出している(自己カプセル化法 Y.Motoyama et al.J.Am.Chem.Soc.2005,125,13150)。今年度はこのような反応の中でも、特に従来カルボニル化合物のヒドロシリル化活性の低さが指摘されてきた白金化合物に注目し、同様の反応を試みた。その結果、白金触媒においては分子内に単一のSi-H基しか存在しない場合には従来の報告どおり三級アミドを還元することはできないが、PMHSに代表されるように分子内に近接する2つ以上のSi-H基が存在する場合には反応が温和な条件で速やかに進行することを見出した。これを前述の自己カプセル化法と組み合わせることによって、オレフィンのヒドロシリル化触媒として汎用性が高く、市販品を容易に入手可能な白金触媒と、安価で安全なPMHSを用いた実用的な三級アミドからの三級アミンの合成法を確立し、その基質汎用性とともに報告を行った(S.Hanada et al.Tetrahedron Letters 2006,47,6173)。さらに、このとき見出された隣接する複数の反応性官能基により、特異的に反応が進行するという隣接基効果に注目し、従来の報告では三級アミドよりもさらに反応が難しいとされてきた二級アミドの還元を試みた。ここでは、当研究室で開発され、高いヒドロシランの活性化能を有するアセナフチレン配位ルテニウム三核錯体を触媒として用いた。その結果、二級アミドから二級アミンへの還元反応では隣接するSi-H基を持ったヒドロシランで反応を行った場合、対応する単一のSi-H基を有するヒドロシランで反応を行った場合に比べて最大300倍近い反応加速が見られることを見出した。これにより、単一のSi-H基を有するヒドロシランで反応を行った場合には目的の二級アミン以外にも多くの副生成物が生じていたのに対して、反応の選択性を飛躍的に高めることに成功した。さらに、本反応から生じる二級アミンは極性化合物であり、カラムクロマトグラフィーを用いた単離が困難であることを考慮して遠心分離とろ過のみからなる生成プロセスを確立し、他の副生成物の選択合成の結果と合わせて、二級アミドからの実用的な反応として現在論文を投稿中である(S.Hanada et.al.J.Org.Ohem.)。
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Research Products
(2 results)