2006 Fiscal Year Annual Research Report
粉体系の不可逆な偏析現象と非平衡定常状態における揺らぎの実験的研究
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06J09777
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
下川 倫子 九州大学, 大学院総合理工学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 粉体の偏析現象 / なだれ / 安息角 |
Research Abstract |
粗くて大きな粒子(Large Rough Grains)と滑らかで小さな粒子(Small Smooth Grains)を一様に混合し、狭い隙間に挿入すると、それぞれの粒子が上下に分離した二層流のなだれが起こる。はじめ、このなだれは定常流としてながれるが、その後、なだれは斜面途中で急激に止まり、なだれ全体が一気に固化する。この定常速度のなだれの急激な停止は従来の理論では説明できない。今年度は二層流なだれの定常状態の破綻について、定性的理解を行った。 二層流なだれが流れている間、このなだれの先頭にはLRGがたまってくる(head LRG領域)。Head LRGの長さδLはなだれが流れた距離Lに対して線形で伸びる(δL=α・L:ただし、αは流量に依存する値)。なだれの先頭角度θ(t)のは幾何学的関係から θ(t)=θ_<st>+tan^<-1>(D/α・L) (1) と書ける。θ_<st>は砂山の角度、Dは二層流の厚みでなだれの中で変動しない。(1)式から分かるように、なだれの先頭角度θ(t)は時間とともに減少する。なだれは砂山の角度が安息角θ_rより大きいと起こり、θ_rになるとなだれが止まることが知られている。本実験では、初め、θ(t)はθ_<LR>よりも大きいためになだれが起こってしまう。しかし、なだれが流れるとLの増加に伴って、θ(t)が小さくなり、いずれθ(t)=θ_<LR>になる。このとき、先頭のhead LRGのなだれが起こらなくなり、砂山のように固化してしまう。結果として、定常的に流れていたなだれが斜面途中で急激に止まり、定常状態が破綻したのである。 θ(t)=θ_<LR>が止まるという上記の仮定を用い、実験から得られたα,D,θ_<st>,θ_<LR>の値を(1)式に代入し、なだれが急激に止まる位置L_Tを導出したところ、流量0.86g/sではL_T=11.8±2.6cmで、実験値13.2cmと実験の誤差の範囲内で一致した。また、その他の流量においても、ほとんど一致していた。 θ(t)=θ_<LR>で起こったhead LRGに見られる粉体の相転移現象は最近注目されているJamming transitionとも関係しており、非平衡統計力学の中での粉体の物理の位置づけを考える上でも興味深い。
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Research Products
(2 results)