2007 Fiscal Year Annual Research Report
粉体系の不可逆な偏析現象と非平衡定常状態における揺らぎの研究
Project/Area Number |
06J09777
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
下川 倫子 Kyushu University, 総合理工学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 粉体の偏析現象 / Jamming Transition |
Research Abstract |
粗くて大きな粒子(Large Rough Grains:LRG)と滑らかで小さな粒子の混合物を狭い隙間に挿入し二次元の大きな砂山を作ると、二種類の特徴的長さを持った新しい縞パターンが観察された。このパターンは山の斜面途中で発生する渋滞波によって作られる。混合物を注ぐとそれぞれの粒子が上下に分離したなだれが起こる。なだれの中で先頭にLRGがたまり、それが十分たまると、定常状態で流れていたなだれは山の斜面途中で急激に止まり、全体が一気に固化し渋滞波が発生する。斜面途中での渋滞波の発生は従来の研究では説明できない。我々は『なだれの先頭角度がなだれ先頭のLRGの安息角と等しくなると止まる』というなだれの急激な固化を表現したモデルを提案し、渋滞波の発生位置を導出した。モデルから得られた値と実験値は実験の誤差範囲内で一致した(Physics Letters A 366,591(2007)で報告)。しかし渋滞波の発生位置の分布は非対称な分布であったがモデルから得られる分布は対称分布であり非対称分布を表現できない。理由として、モデルはなだれ下の下地粒子となだれの構成粒子との相互作用を考慮していないことが上げられる。下地粒子が動かない条件では対称なガウス分布が得られ、下地粒子の自由度を大きくすると分布の非対称の度合いが大きくなった。下地粒子が動かなければモデルの条件を満たすと止まることができるが、下地粒子が動くことでなだれは動き続ける。なだれと下地粒子との相互作用は確率モデルで解釈し、このモデルは分布関数の指数関数的減少を示す。これは実験から得られるなだれが止まる位置〓の非対称分布の裾野部分とよく一致していた。安息角モデルと確率モデルの組み合わせで得られた分布は実験の非対称分布とよく一致する。また、極限で組み合わせモデルはガウス分布を与え、下地粒子が動かないときの対称分布も表現できた(Physical Review E 77,011305-1(2008)で報告)。また、粉粒体の物理でホットな話題「Jamming transition」では、粉粒体にシアーをかけると液体状態になり、粉体密度が大きくなると、流動化していた粉体が固体状態に転移し、相転移現象に類似した現象が起こっているといわれている。そのため、非平衡系での相転移現象の理解につながると期待されている。本実験はなだれが下地粒子にシアーをかけることで砂山の一部として固化していた下地粒子が液体状態になるが、なだれ粒子と下地粒子の相互作用によって内部の粉体密度が大きくなり、液体固体相転移現象が起こったものと考えられる。本研究とJamming transitionとのつながりも興味深い。
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Research Products
(5 results)