2006 Fiscal Year Annual Research Report
日米中における政教関係の、司法関係文書の分析による比較研究
Project/Area Number |
06J09901
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
住家 正芳 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 政教関係 / 信教の自由 / 宗教 |
Research Abstract |
初年度である18年度は資料の調査、分析に重点を置き、当研究に関する研究発表は行わないこととした。 日本に関しては、宗教に関する戦後の最高裁での判決について、「目的・効果基準」が形成、運用された過程を軸に、津地鎮祭事件、自衛官合祀拒否事件、箕面忠魂碑慰霊祭事件、愛媛玉串料事件などの判決文における宗教理解を分析した。同時に、それらの判決をめぐる議論を、靖国神社公式参拝問題に関する論争なども含め、幅広く渉猟した。 米国については、目的・効果基準のモデルとなったレモン・テストが連邦最高裁で定式化される過程を軸として、エヴァスン事件、マガワン事件、シェンプ事件などの判例を分析した。そのうえで、レモン・テストの運用例とその後の問題点などを、近年の判決まで含めて数多くの判例から析出し、あわせて政教関係や信教の自由に関する米国法学会における議論の動向を調査した。 日米の判例分析に関しては、政教分離や信教の自由をめぐる判例の論点が、公共の福祉に奉仕すべきものとしての宗教観と、そのような宗教観に順応することによって、かえって失われかねない宗教教団の独自性との葛藤として描出できるものであるとの見通しを得た。 中国に関する研究としては、上海図書館および同図書館徐家匯蔵書楼にて、19世紀の宣教師に関する資料と、民国期の宗教関連資料の調査を行った。19世紀の資料には欠損が多い反面、民国期に関しては予想以上に資料が豊富であることが判明した。
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