2008 Fiscal Year Annual Research Report
日米中における政教関係の、司法関係文書の分析による比較研究
Project/Area Number |
06J09901
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
住家 正芳 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 政教関係 / 判例 / 宗教 |
Research Abstract |
日米の宗教判例について、昨年度に引き続き分析を進め、一定の結論を得た。日本の判例について政教分離の判定基準となっている「目的・効果基準」について、基準そのものがあいまいなため、一義的な結論が得られない点、そのため、恣意的な運用が可能となり、裁判官ごとに結論が異なる点、津地鎮祭訴訟における最高裁判決が判例として確立しているため、神道式儀礼を慣習とみなして「宗教」のカテゴリーから除外し、国家機関との関与を許容する傾向が強い点、したがって、宗教的少数者に不利な判決が出やすい状況になっている点を問題点として整理した。その上で、判例における神道および神社の取り扱いは、戦前、いわゆる「国家神道」が国家官僚らによって構築された際の論理に類似していること、さらに戦後、神社と国家の結びつきを正当化しようとした神道系イデオローグの論理とも重なるものであることを確認した。以上の作業より、「国家神道」の概念をコスモロジー=イデオロギー構造として捉えれば、「国家神道」は戦後の裁判所によっても保持されているとみなし得ることを明らかにした。判例は、「神道儀礼は宗教というよりも慣習であり、国民の大多数もそう認識している」という前提を設定することで立論を正当化してきたが、そのような前提は必ずしも自明ではなく、たとえそうであったとしても「多数者の専制」を引き起こす危険性が憂慮される。改善策としては、目的・効果基準」を厳格に運用すべきであり、具体的には、宗教法人格を取得している団体はすべて「宗教」と判定し、国家機関との関与を厳格に排除すべきこと、政教分離を判定する際には、多数者の認識のみならず少数者の抱くであろう疎外感にも配慮すべきこと、などが挙げられることを明らかにした。
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