2006 Fiscal Year Annual Research Report
人間言語における論理形式の派生アルゴリズムの解明およびその多角的検証
Project/Area Number |
06J09919
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 将一 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 非循環的併合 / 束縛原理 / 副詞節 / 変項束縛 / 削除 / 先行詞を含む削除 |
Research Abstract |
1,非循環的併合についての研究 本研究は、私の博士論文で提案した非循環的併合が限定詞の限定節に適用可能であるという理論を、新しい言語データを基にさらに発展させたものである。限定詞の限定節に対する非循環的併合は、A移動では比較的自由に適用可能であることが束縛原理に関する事実から知られている。一方、A'移動ではこの操作が、非常に限られた状況でしか適用できないと考えられる。このA移動とA'移動の非循環的併合の適用可能性についての非対称性を、限定節の格の特性の観点から説明を行った。この分析により、現在まで分析が存在しなかった言語事実に対し説明をあたえることが可能となり、さらに新しい言語事実の発見にも至った。本研究の帰結として、人間言語の論理形式に課せられている制約の一つを解明するに至った。 2,時を表わす副詞節の統語構造および意味解釈についての研究 本研究は、時制情報が論理形式にどのように構造表示されているのかを解明することを主要な目的としている。具体的な研究成果としては、before、afterなどの時を表わす副詞節内に存在する非顕在的な演算子の移動が、副詞節が修飾する主節にも存在していることを削除現象のデータを基に提案した。また、時を表わす副詞節において観察される、意味解釈の曖昧性と削除の認可条件との相互作用を利用し、変項束縛関係が時を表わす副詞節の補文内に存在し、削除の認可に影響を及ぼすことを示した。さらに、時を表わす副詞節における先行詞を含む削除に対して、補文に非循環的併合を適用するという分析を提案した。この分析により、時を表わす副詞節における先行詞を含む削除において、束縛原理Cの違反が回避されるという事実を説明することが可能となった。
|