2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J09936
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒向 重行 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 赤外線天文学 / 観測装置 / 星周円盤 / 検出器 / フィルタ / 低温 / ビエソ / チリ |
Research Abstract |
特別研究員採用1年度は、若い星の星周円盤の研究を飛躍的に進めることが期待される波長30μm帯観測装置の開発を主におこなった。MAX38(Mid-infrared Astronomical eXplorer 38)と名づけた本観測装置は、地上望遠鏡用としては初となる波長30μm帯の観測が可能な装置である。私は特にMAX38のエレクトロニクス部の開発を担当した。装置の要となる中間赤外線検出器BIB Si : Sb 128x128の読み出しシステムの構築をおこない、MUX(検出器から感光部のみをのぞいたチップ)の極低温(7K)下での駆動に成功した。次年度には赤外線の受光試験をおこなう予定である。また、世界初の試みである極低温で駆動する振動鏡の制御部の開発もおこなった。エンジンであるピエゾ素子をリアルタイム計算機と静電容量型ギャップセンサーを用いてフィードバック制御することで、振動鏡を極低温(7K)下において高精度に駆動することに成功した。また、新しい方式の天文用光学フィルタの開発もおこなった。透過材料の乏しい波長30μmでは、光学フィルタを製作することが極めて難しい。そのため私は、応用光学の分野で注目されている多層金属メッシュ方式を天文用フィルタに応用する研究をおこなった。FTDT法電磁解析にて波長30μm帯にピークを持つ多層金属メッシュ構造を設計し、半導体プロセス(フォトリソグラフィ)により製造、300-4Kの温度範囲にて完成したフィルタの透過率の評価をおこなった。今後、より狭帯域でより高い透過率のフィルタの実現をめざす。次年度に計画している実際の天体を用いた試験観測にむけて、以上の開発要素を1つの観測装置(MAX38)にアセンブルする作業も順次進めている。2006年4月と11月には、MAX38を取り付ける1.0m望遠鏡の建設予定地(チリ、アタカマ高原、チャナントール山頂、標高5,600m)のサイト調査を実施した。気象観測とシーイング観測の結果、チャナントール山頂は赤外線天文観測に最適なサイトであることが明らかになった。2008年の1.0m望遠鏡建設にむけて作業コンテナの設置、太陽発電による電力の確保、衛星通信機器の設置といった基盤整備もおこなった。以上の研究活動と並行して、共同研究者とともにすばる望遠鏡中間赤外線観測装置COMICSを用いた若い星の星周ダストの中間赤外線観測をおこない、11.研究発表の項で挙げた学術論文の成果をあげた。
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