2006 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙相転移における磁場揺らぎの生成および大域的な宇宙構造の形成と進化の解明
Project/Area Number |
06J09940
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市來 淨與 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 宇宙物理 |
Research Abstract |
天文観測技術の向上により、銀河、銀河団という非常に大きな天体スケールで磁場が普遍的に存在していることが観測的に明らかになっている。しかし、そのような大スケールでの磁場の起源は未だ分かっておらず、宇宙の大問題として残されている。私は、非常に成功した理論である宇宙線形密度揺らぎの理論における摂動2次の効果で、宇宙誕生38万年までに大小様々なスケールにおいて磁場が生成されることを示した。(投稿中) 線形摂動2次の効果で初めて現れる磁場生成以外の効果についても研究を進めている。宇宙初期での揺らぎの理論では、線形摂動1次の理論では、密度の揺らぎと重力波はそれぞれ独立に発展・成長することが示されている。しかし、摂動2次まで考慮するとこの2種類の揺らぎは独立ではなくなり、相互に関係することになる。ここで私は、密度の揺らぎは詳細に観測されているが、重力波は観測されていないという事実に注目し、密度揺らぎから摂動2次の効果で生成される重力波の大きさ、およびその成長の様子を数値計算によって初めて詳細に計算した。(投稿中) また摂動理論の応用的な研究として、宇宙に普遍的に存在すると考えられている背景ニュートリノと背景反ニュートリノの問に非対称性があった場合、その非対称性が背景重力波に与える影響を考察した。膨張宇宙における重力波の成長は主に宇宙の膨張とともに振幅を落とすものであるが、初期宇宙の輻射優勢期にはニュートリノの4重極成分と作用してその成長の様子を変える。報告者は受け入れ教官らと共に、非対称の効果をニュートリノ分布関数を通して宇宙線形揺らぎの理論に取り込み、重力波の発展を計算した。その結果ニュートリノの非対称性が大きい場合、その影響は現在における背景重力波の振幅の増加となってあらわれることを明らかにした。(Physical Review D誌に掲載)
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Research Products
(3 results)