Research Abstract |
本研究では,擬一次元系に代表される低次元系電子(フェルミオン)の特異なふるまいを解析的・数値的方法の両側面から明らかにすることを目的としている.特に,フェルミ液体的ふるまいと非フェルミ液体(例えば朝永・ラッティンジャー液体)的ふるまいの境界領域,または混成領域に着目している. 本年度は,まずこれまで開発してきたN本鎖くりこみ群の開発をさらに進め,擬一次元系のより詳細な計算が行える様にした.またこの手法を用い,これまで具体的なふるまいがほとんど明らかにされていなかった,磁化率の温度依存性における次元性(圧力)の効果を明らかにした.乱雑位相近似に基づく比較的簡単な予想に反し,次元性(圧力)により磁化率は減少することが分かった.また,短距離斥力だけでなく,長距離斥力の効果も調べ,有機導体の実験結果とより定量的に議論できる結果を得た. さらに同手法を用いて,超伝導相関における次元性(圧力)の効果を調べた結果,擬一次元系では,次元性(圧力)の効果により超伝導相関が増大することを明らかにした.これは,他の相関電子系における超伝導のふるまいとは正反対のふるまいであり,新たに見つかった擬一次元系の特殊な性質である.またこのことが,最近有機導体(TMTTF)_2SbF_6で観測された圧力による超伝導転移温度上昇の起源である事を初めて指摘した. 一方,擬一次元系とは異なる低次元系(三角格子系)においても,朝永・ラッティンジャー液体で見られるようなスピン・電荷分離が現れる可能性を研究した. 従来の三角格子t-J模型に新たに多スピン交換(リング交換)の項を加えた模型を数値的厳密対角化によって調べた.18サイトまでの結果を総合すれば,モット絶縁体に少量の正孔を注入した系では,多スピン交換によってフェルミ液体とは異なる,スピン・電荷分離的ふるまいを示す"新しい量子液体"が現れることを見出した.さらに正孔を注入すると,多スピン交換の影響が弱まり,通常のフェルミ液体に戻る.この新しい量子液体は,最近スピン・質量(電荷)分離的ふるまいが観測された二次元^3Heの新奇な状態に対応していると考えられる.
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