Research Abstract |
超短パルスを用いて分子構造変化を分子振動の瞬時周波数変化として直接観測することにより、クロロホルムの酸化反応機構を解析した。その結果、クロロホルムと酸素の電荷移動錯体に可視光パルスを照射すると、ラマン振動が励振され、C-Hインサーション機構でクロロホルムの酸化反応が進行することが明らかになった。 更に、Ru^<II>(TPP)(CO)の蛍光寿命を含む励起状態のダイナミクスを超短パルスにより解析した。自然発光では、^1Q_<X(1,0)>(π,π^*)→^1Q_<X(0,0)>(π,π^*)への緩和が速いため、^1Q_<X(1,0)>(π,π^*)からの蛍光を観測することは難しいが、今回、誘導放出過程により、^1Q_<X(1,0)>(π,π^*)からの蛍光を測定することが出来た。電子状態と振動との相関から、5配位型Ru^<II>(TPP)(CO)では、^1Q_<X(1,0)>(π,π^*)→^1Q_<X(0,0)>(π,π^*)への緩和寿命が約230fs、^1Q_<X(0,0)>(π,π^*)→^3T(π,π^*)への交換交差、および^1Q_<X(0,0)>(π,π^*)→S_0への発光(蛍光)寿命が約1060fsであることを明らかにした。一方、6配位型Ru^<II>(TPP)(CO)(acetone)では^1Q_<X(1,0)>(π,π^*)→^1Q_<X(0,0)>(π,π^*)への緩和寿命が約90fs、^1Q_<X(0,0)>(π,π^*)→^3T(π,π^*)への交換交差、および^1Q_<X(0,0)>(π,π^*)→S_0への発光(蛍光)寿命が約0.5psであることを明らかにした。また、1重項状態から3重項状態への項間交差は、突然おこるのではなく、徐々に変化していくことが明らかになった。
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