2008 Fiscal Year Annual Research Report
超短パルスを用いた実時間分光及び理論解析に基づく反応機構の解明
Project/Area Number |
06J09970
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
岩倉 いずみ The University of Electro-Communications, 特別研究員(PD)
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Keywords | フェムト秒レーザー / 時間分解スペクトル / 反応機構解析 / 項間交差 / 酸化反応 / プロトン移動反応 |
Research Abstract |
紫外部に吸収を有するクロロホルムと酸素の電荷移動錯体を試料とし、可視光超短パルスレーザーによるポンプ・プローブ測定を試みた。その結果得られた分子振動の位相が正弦的であること、分子振動振幅がポンプ光強度に比例すること等から、電子励起ではなく、ラマン励振過程により分子振動が励振されていることを見出した。これらの知見から、光を用いて電子基底状態における熱反応を開始できることが明らかになり、この手法を応用して、熱反応であるクロロホルムの酸化反応機構を解析した。その結果、C-Hインサーション過程で反応が進行していることを明らかにした。 超短パルスを用いて分子構造変化を分子振動の瞬時周波数変化として直接観測することにより、インジゴ染料の電子励起状態における動的過程を解析した。その結果、インジゴ染料では光励起後プロトン移動反応が進行することにより、トランスーシス異性化反応が阻害されることが明らかになった。 さらに、5配位型Ru^<II>(TPP)(CO)錯体のクロロホルム溶液を試料として、励起1重項状態から励起3重項状態への項間交差過程に伴う、ポルフィリン環の伸縮振動波数の変化を直接観測した。この結果は励起状態における電子状態の動的過程と非常によい一致を示し、約1ピコ秒で、項間交差が進行することが明らかになった。また、項間交差は瞬時におこるのではなく、励起1重項状態と励起3重項状態のエネルギー曲面の交差点において、数百フェムト秒間、滞在した後に進行していることが明らかになった。
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Research Products
(11 results)