2006 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属-典型金属複合触媒による高選択的合成反応の開発
Project/Area Number |
06J09971
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 喜光 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | π共役系有機分子 / 分子内環化反応 / 電子輸送剤 |
Research Abstract |
近年急速に進展しつつあるフラーレンやヘテロールのような伝導性π共役有機分子の開発研究において本研究では,電子輸送材としてのフラーレンと導入するヘテロ原子によって正孔・電子輸送材どちらにも機能する可能性のあるヘテロールを組み合わせた,新規拡張π共役分子の創製を目的としている.1年目にはπ共役系拡大反応を目標にして,インジウムを触媒とした多重結合連結・拡張反応を開発した.その結果,ω-アルキニルカルボニル化合物においてこの反応が,一般に困難であると言われている中員環合成にまで応用出来る程の力量を秘めた反応である事が示された.一方,ベンゾヘテロールを電子輸送材として機能させるためのヘテロール環内への電子受容性元素の導入に関しては,前年度における他の研究グループの発表を受けて計画を変更し,平成19年度への繰越を行った. ヘテロール類が電子輸送材として機能するためにはそのLUMOレベルが十分に低くある必要がある.他の研究グループによる理論計算による予測では,ホウ素を導入したボロール,ケイ素を導入したシロール,リンを導入したホスホールがその有力候補である.種々検討の結果,この中でベンゾホスホールの合成法を確立する事ができた. (ο-アルキニルフェニル)ホスフィンに対してブチルリチウムを作用させると,3-リチオベンゾホスホールが高収率で生成する.この活性中間体を,ベンゾホスホールモジュールとして種々の求電子剤と反応させる事によりこれまで官能基化が困難であったベンゾホスホールの3位への置換基導入が可能になった.さらに,リチオ化された中間体を亜鉛中間体にトランスメタル化させる事により根岸カップリング反応が適応可能になり,この反応の応用範囲を大幅に拡大出来る事が大きな特徴である.一例として,1,4-ジョードベンゼンとの根岸カップリング反応によりベンゼン環上に二つのベンゾホスホールを導入した分子が合成出来る.これを酸化してホスフィンオキシドに変換したものは,電気化学測定の結果,電子輸送材として機能する可能性を示した. この成果は論文として受理され,現在印刷中である.
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Research Products
(1 results)