2007 Fiscal Year Annual Research Report
戦後期欧州における経済統合政策-ピエール・ユーリとロバート・トリフィンの連携-
Project/Area Number |
06J10047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 憲 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヨーロッパ経済論 / アメリカ経済論 / 通貨統合史 / 現代欧米経済史 / フラン圏金融史 |
Research Abstract |
19年度前半に,平成18年度開始の共同研究プロジェクト『大塚久雄『共同体の基礎理論』を読み直す』が日本経済評論社より刊行された。筆者は,編者である小野塚知二・沼尻晃伸両氏の依頼に基づく「討論記録」および本科学研究費補助金に基づく在外研究成果の一部としての「ピエール・ユーリと共同体論」を分担執筆している。「ピエール・ユーリと共同体論」では,ユーリの思想的・精神的支柱たるユダヤ教信仰に基づく「共同性」に着目しつつ,「短期的経済的不均衡を長期的社会的不均衡へと深化させてはならない」という経済統合政策上の基本理念や長期安定成長という観点に基づくソ連型計画経済への親近感を実証した。本稿では,EEC域内発展途上地域としての海外領土における開発支援の一翼を担う欧州投資銀行の運転資金を,グローバルな資本市場における債券発行を通じて調達したユーリ統合政策の原点を,彼自身が書き残した多くの履歴書類や未刊行論文を検証することで明らかにした。 19年度においては,上述の研究をさらに前進させた。具体的には,ロバート・トリフィンが,EEC域内経済格差是正策としての欧州投資銀行設立を理論的側面から支援し,「モネティスト」ユーリとの連携を深めたことを実証する作業が進展した。また,ポストコロニアル研究が過度に強調する「脱植民地」概念を,フラン圏通貨委員会史料分析に基づき批判的に再検討する作業を,前年度に引き続き実施した。 平成19年9月13-15日に開催されたEBHA第11回年次総会(於ジュネーヴ大学)に出席し,国内外の一流研究者との交流を図ったことは,今後の研究に重要であると思われる。一例を挙げれば,矢後和彦教授(首都大学東京)から,IMFおよびアメリカ国立公文書館における共同研究やBISおよびIMFの要職を歴任しトリフィンとの交流が深かったベール・ヤコブソン伝記の翻訳企画へのお誘いをいただいた。
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Research Products
(1 results)