2006 Fiscal Year Annual Research Report
共通感覚の系譜学-その認識論的、美学的ならびに政治的射程についての総合的研究
Project/Area Number |
06J10070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
門林 岳史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 共通感覚 / 感性論 / マーシャル・マクルーハン / モダンズム / ニュー・クリティシズム / 構造主義 / 戦後アメリカ文化 |
Research Abstract |
本年度は、本研究課題を受託する以前から続けてきたマーシャル・マクルーハンについての研究を博士論文としてまとめるとともに、本研究課題のうちでこれまでの研究との連続性の強い領域について一定の成果にまとめる作業に傾注した。とりわけ重点をおいたのは、マクルーハンにおける美学=感性論的認識と、20世紀初頭の文学理論との関わりである。具体的な対象は、マクルーハンがその経歴の初期、1940から50年代に残した文学批評のテクストであり、それらを読解することで、彼が強い影響化にあったT・S・エリオットやジェイムズ・ジョイスなどのモダニズムの文学や、I・A・リチャーズなどのニュー・クリティシズムの文学理論から、マクルーハンがどのようなかたちで感性論的認識を引き継いでいるかを明らかにするとともに、それが60年代のメディア研究にもたらした影響を考察した。とりわけモダニズムの文学における「意識の流れ」と呼ばれる手法をめぐっては、その哲学的な背景であるウィリアム・ジェイムズの感覚理論を再検討し、そこに見られる哲学的な認識がモダニズムの作家たちの言語表現における美的態度と通底していることを、明らかにした。 第二にマクルーハンと構造主義との関わりにも考察を進めた。とりわけ着目したのはマクルーハンが晩年に考案した「テトラッド」と呼ばれるメディア分析のための理論的図式であり、この理論が60年代のマクルーハンの感性論的認識をどのように発展させたものであるかを明らかにするとともに、それと相同的な図式をフランスの構造主義者たちが多用したクライン群に見出し、比較検討した。 最後に、「共通感覚」概念の現代的意義を明らかにするという本研究の最終的な課題に向けては、7月にUCLAのFilm and Television Archiveに渡航、60年代のテレビ番組を集中的に視聴し、現代における感性論的な価値の変容を戦後アメリカという文化的コンテクストのもとで考察するための準備作業を進めた。
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Research Products
(1 results)