2008 Fiscal Year Annual Research Report
詩形成の現代性-フランス19世紀における散文詩の展開
Project/Area Number |
06J10081
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 大地 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 散文詩 / ロマン主義 / マラルメ / ボードレール / ヴィリエ・ド・リラダン / 死生観 / 文学 / フランス |
Research Abstract |
本年度は、昨年度までのマラルメの散文詩に関する研究を継続しつつ、それをボードレールの散文詩と比較することで、研究領域を19世紀の中盤にまで広げてゆくことに努力した。 まず、日本フランス語フランス文学会の学会誌に掲載した論文は、前年度に行った学会発表(「マラルメの『詩』」)をもとに、フランス語で発表した論文である。マラルメの作品に関して、散文詩に限らず考察し、マラルメが「詩」という言葉で指していたものの射程を明らかにした。一般的にマラルメの散文詩とみなされるのは13篇に限られてきたが、そのような規定の根拠は薄弱であること、マラルメが試みた散文での詩作は、むしろロマン主義的な観点、すなわち詩人の使命に関する議論のうちに、その意義が明らかされるべきことを示した。 次に、論文「女をさらす-マラルメとボードレール散文詩」では、マラルメの作品とそれに先行するボードレールの作品からそれぞれ二つづつ選び、比較検討することを方法的骨格にしている。ボードレールの創始した近代散文詩を出発点としたマラルメが、次第にその規定から逸脱し、独自の散文を作り出すことで読者との交流を模索する様子を明らかにした。 また、日本フランス語フランス文学会秋季大会での発表は、マラルメの散文中、例外的な長さを誇る作品『ヴィリエ・ド・リラダン』を取り上げ、そこに現れるマラルメの死生観を検討した論文である。当時としては非常にラディカルな無神論に立つマラルメが、それでもなお残るべき文学的遺産と考えていたものは何か、検討した上で、文学による生の救済の可能性がマラルメの独特の散文によって素描されてゆく過程を明らかにした。
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Research Products
(3 results)