2006 Fiscal Year Annual Research Report
概均質ベクトル空間の大域ゼータ関数とその数論的応用に関する研究
Project/Area Number |
06J10151
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷口 隆 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 代数的整数論 / 概均質ベクトル空間 / ゼータ関数 / 密度定理 / 代数群 |
Research Abstract |
概均質ベクトル空間とそのゼータ関数を軸に,代数的整数論の研究を行った.今年度の基本的な成果は3つあり,うち初めの2件は論文を投稿中で,最後の1件は投稿に向け論文を準備中である. 1,3次代数の分布について研究した.代数体kの整数環をO_kとする.O_k上の代数で,局所自由で階数3かつ整域であるものの同型類の集合をC(O_k)とする.2元3次形式の空間を用いてC(O_k)のパラメータ付けを行い,付随するゼータ関数の解析的性質から,C(O_k)の判別式の分布を調べた.各素点での分解条件に応じた比例定数も計算し,またkが2次体のときは,類数が3で割れるときに限ってC(O_k)の中でSteinitz類が等分布でないことを証明した.これまでの代数的整数論の研究の中で,Steinitz類が等分布にならない現象が実際に確認されたのは初めてだと思われる.これらの成果はオランダのLorentz Centerで開かれた国際研究集会"Rings of Low Rank"(2006/6/12-16)で報告し,反響を呼んだ. 2,Wright-Yukie理論の透明化を行い,幾何学的対応とGaloisコホモロジー的対応が一致する理由を明確にした.またこれを用いて,彼らが扱った表現のうち,残されていたほぼすべてのk-formに対する有理軌道分解を与えた. 3,2元3次形式のゼータ関数を,格子を変えて調べた.いわゆる"大野予想"と呼ばれる,2元3次形式のゼータ関数についての関数関係式(中川仁氏によって証明された)の類似等を調べた.不変格子は5組10種類あり,このうち3組は線形の関数関係式をもち,他の2組は持たないことが分かった.また類数の密度定理や,局所ゼータ関数の明示公式も証明した.
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