2006 Fiscal Year Annual Research Report
1分子的手法を用いた酵母プリオン線維の成長と分裂の解析
Project/Area Number |
06J10187
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 雄嗣 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | タンパク質 / アミロイド / プリオン |
Research Abstract |
タンパク質性の伝播因子であるプリオンは、異常構造に変換されたタンパク質分子が集合してアミロイド線維を作り、それがさらに周囲の正常型タンパク質の構造変換を誘発することにより増殖・伝播する。その過程には、大きく分けて 1.タンパク質の構造変換を伴った線維成長と、 2.線維の分裂 という2つの機構が存在していると考えられている。この2つの機構を詳細に解析するため、1分子観察の手法を用いて研究を進めている。 1.「タンパク質の構造変換を伴った線維成長」の解析に関して、最終的には全反射蛍光顕微鏡上で、線維末端における構造変換を1分子FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)という手法で直接観察する計画であるが、それに適した材料を調製する必要がある。筆者は酵母由来のタンパク質Sup35NMを用いて、構造変換を起こすと考えられている領域内の2残基をシステインに置換し、それぞれ「ドナー」および「アクセプター」となる2種類の蛍光標識を導入した。この2残基を選択するに当たっては、正常型・異常型ともに詳細な構造が不明であるため、可能性のある組み合わせの標品を複数作製することにした。現在、作製したタンパク質を多分子系で測定し、野生型と同様のアミロイド線維形成能を持ち、かつ構造変換に伴うFRET効率の変化が大きいものを選択しようと試みている。 2.「線維の分裂」の解析に関して、筆者は酵母抽出物の中から効率よくSupNM線維を切断するタンパク質因子を同定し、その性質を解析した(論文投稿準備中)。この因子は、ATP加水分解エネルギーを利用してSup35NM線維を切断し、他のタンパク質因子の助けを必要としない。今後、蛍光標識したSup35NM線維を固定し、線維切断因子の作用を顕微鏡下で直接観察することや、原子間力顕微鏡などを用いて線維に張力を及ぼし、線維切断因子を加えたときの強度の変化を解析することを試みたいと考えている。
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Research Products
(2 results)