2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J10259
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤城 美恵子 The University of Tokyo, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国法制史 / 死刑執行制度 / 秋審条款 / 裁判基準 |
Research Abstract |
各種史料を精読・分析し、それと並行して秋審条款の成立背景・規定の形式・規定の内容について律例との対比の見地から研究を進め、それぞれ成果を発表した。 清朝前半期における秋審審理機構の一元化は、中央の刑部に経済・労働の両面で多大な負担をもたらした。負担軽減を目的に設立された秋審処が秋審判断に対して中心的役割を果たすようになると、作業効率化のために刑部内部における判断基準の共有が必要となり、秋審条款が成立した[「清代的秋審処与秋審条款」、『理性与智慧:中国法律伝統再検討』(中国)、2008]。 ただし、その規定の形式に着目すると、とある行為に対して規定の中に明示される要件を満たしたと判断されれば自動的に科されるべき刑罰が定まり、したがって判断者にもはや量刑の余地を残さない律例とは異なり、秋審条款はただ加重するべき事由・軽減するべき事由を列挙しているに過ぎず、死刑とするべきか否かの判断は判断者自身に委ねられた[中国史学会第9回国際学術大会(2008年9月27日、於韓国・忠北大学校)にて報告]。 また、規定の内容に関しては、親属間の殺傷行為を素材として取り上げ、検討した。凡人の行為であれば律例の中で直接規定され定案時の量刑にも反映される加重・軽減事由の一部は、伝統的な観念から親属間の殺傷行為には適用されるべきではないとして、律にも規定されなかった。秋審判断においてはこれらの事由が考慮要素として積極的に取り入れられ、秋審条款の中で基準として規定された[「清代服制事案に関する一考察-秋審手続を通じてみたる-」、『東洋文化研究所紀要』155冊、2009]。 以上の研究は、清朝における「法」のありかたを考察する上で、重要な手掛かりを提示するものと考える。
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Research Products
(3 results)