2006 Fiscal Year Annual Research Report
半導体量子ホール端状態を利用した核スピン制御と固体量子情報技術への応用
Project/Area Number |
06J10281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浜屋 宏平 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 半導体スピン / 核スピン / 量子ホール効果 / 量子情報技術 |
Research Abstract |
半導体を用いた量子計算を実行するために、電子スピン系に比べ格段に長いコヒーレンス時間を有する核スピンを利用することが応用上非常に有利である。18年度は、GaAs系におけるNMRスペクトルのゲート電圧制御、および、コヒーレンス時間の長い系として知られるSi系二次元電子系Si/SiGeヘテロ構造)における核スピン偏極技術の確立を目的として研究を進めた。 AlGaAs/GaAs量子ホール系 当研究室の有する量子ホール端状態近傍における核スピン制御技術は、横型ホールバー素子によって実現されている。そのため、微細加工技術を用いて素子にサイドゲートを作製し、核スピン偏極近傍の電子濃度を電気的に変化させることができる。これを利用し、電子系-核スピン間の相互作用を自在に制御し、サイドゲート電圧で核磁気共鳴(NMR)周波数を制御することに成功した。これは、固体素子中で実現した世界で初めてのNMR周波数のゲート電圧制御であり、1量子ビット制御から多量子ビット制御への道を切り開いた成果と言える。 Si/SiGe量子ホール系 Si系における電気的核スピン偏極の実現に向けた基礎研究として、高移動度Si量子ホール系におけるエッジチャネル伝導を理解することが重要である。ν=4量子ホール状態において、スピン分離エッジチャネル間に非平衡分布を導入すると、エッジチャネル間散乱の抑制に起因するホール抵抗値(R_<xy>)の量子化値(h/4e^2)からのズレが明瞭に観測された。一方、平行磁場(B_<//>)の印加によりZeeman分裂(ΔE_z)を拡大し、ランダウ準位交差を引き起こすことによって、エッジチャネルのスピン状態を(0↓,0↑)から(0↓,1↓)へと転移させると、エッジチャネル間散乱は急激に促進され、R_<xy>はh/4e^2に近づいた。このB_<//>に依存した系統的な変化は、Si量子ホール系におけるエッジチャネル伝導の明瞭なスピン依存性を示唆している。このランダウ準位交差点近傍のR_<xy>の顕著な変化は、核スピンのつくる有効磁場が電子系に作用した際にも生じると考えられるため、核スピン検出のプローブとなる可能性を秘めており、今後この顕著なスピン依存伝導を利用した核スピン偏極の検出を試みる予定である。
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Research Products
(6 results)