2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J10412
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂巻 静佳 The University of Tokyo, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際法 / 国家免除 / 裁判権免除 / 外交特権免除 / 雇用契約 / 国際民事訴訟法 |
Research Abstract |
(1)昨年に引き続き、国家実行の分析を通じて今日の通説的国家免除理解を検証した。通説は、国家実行を絶対免除主義から制限免除主義へと免除を享受する範囲が縮小する過程と捉え、今日、「主権的行為」については免除が付与されるが「業務管理行為」については免除が否定されるとする制限免除主義が広まりつつあると理解する。この主権的行為/業務管理的行為という国家の行為を二分する通説的基準は、商取契約事案以外に必ずしも該当するものではないとの仮説にもとづいて、近年蓄積著しい雇用契約に関する国家実行の検討を進めた。 (2)19世紀後半、この「主権的/業務管理的行為二分基準」が適用された事例の多くは商取引契約事案であった。20世紀半ばを過ぎて、不法行為事案や雇用契約事案において国家免除が提起される機会が増加すると、非-商取引契約事案であるこれらに対しても当該基準が適用されるようになった。ところが、非-商取引契約事案における当該基準の適用は一貫した結論を導かず、この基準は学説による激しい批判にさらされた。しかしながら、これは当該基準が商取引契約事案にもとづき導出された基準であることに起因し、基準確立後に登場した雇用契約事案等への当該基準の妥当性は改めて問われる必要があると思われる。 (3)そこで、雇用契約事案についてこの基準の妥当性を検討するに、国家実行上、当該基準が必ずしも免除の可否の判断と結びついていないことが明らかになる。雇用契約事案における国家免除の判断においては、国家の雇用契約の締結という行為それ自体の性格のみならず、雇用者の地位・職務内容、被用者の地位・職務内容および請求内容が検討とされている。ただし、1980年代以降、国内法を制定することなく制限免除主義の採用を明言した国家のなかには、雇用事案に対しても上述の国家の行為二分基準を厳格に適用し、一貫して免除を否定する傾向がみられる。(796字)
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Research Products
(1 results)