2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J10412
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂巻 静佳 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際法 / 国家免除 / 裁判権免除 / 雇用契約 / 不動産 / 国際民事訴訟法 |
Research Abstract |
(1)国際法上の国家免除制度の本旨を明らかにするために、国際法学説上、国家免除概念が、外交特権免除等とは独立した国際法上の概念として、いつの段階で登場してきたのか調査した結果、19世紀後半に、国家の免除について論じた著作が相次いで公表されて以後、単独の項目として論じられるようになったことが明らかとなった。 (2)今日の国際法上の国家免除を明らかにするために、国家実行の分析を通じて今日の通説的国家免除理解を検証した。通説は、国家実行を絶対免除主義から制限免除主義へと免除される範囲が縮小する過程と評価するとともに、いわゆる「主権的行為」については一貫して免除が付与されてきたと理解する。そこで、通説的見解は商取引事例を前提に構築されており、必ずしも他分野に該当するものではないとの仮説にもとづき、20世紀以前よりとりあげられてきた不動産と、近年蓄積著しいと評価される雇用契約に関する国家実行を検討した。 法廷地国領域内に所在する不動産に関る訴訟については、絶対免除主義のもとでも法廷地国が裁判権を行使するとされており、またその根拠として領土主権の優位、免除を認める法廷地国の不都合もあげられていることから、主権性のみで裁判権の行使の可否が判断されていたとは言いがたいことが明らかとなった。 他方で、雇用契約の締結等自体は私人でも可能な行為でありながら、雇用者たる外国国家には比較的広い免除が認められる傾向があらわれた。雇用事例においては、「主権的行為」の判断要素として、商取引の場合に一般に検討される当該契約の内容(雇用事例においては、雇用者の業務および被用者の職種・地位など)に加えて請求内容が問題とされ、採用や復職など組織編制に影響が及びうる請求がなされている場合には、裁判権の行使が否定される傾向が強いといえる。(757字)
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Research Products
(1 results)