2007 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本政治思想史における政治と「市場」-「租税」の問題を中心に-
Project/Area Number |
06J10419
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 有理 The University of Tokyo, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 政治 / 市場 / 租税 / 田口卯吉 / 福沢諭吉 / 『明六雑誌』 / 阪谷素 |
Research Abstract |
近代日本政治思想史における政治と「市場」との接点を探るべく、田口卯吉の『日本開化小史』を手がかりに検討を加えた。その成果が日本政治学会編『年報 政治学2008-1 国家と社会:統合と連帯の政治学』への掲載が決定した、「「制度」と「人心」- 『日本開化小史』の秩序像」である。従来、経済史や史学史上のみから扱われることの多かった田口卯吉は、本稿により政治と「市場」という側面から新たな光が当てられた。田口卯吉研究と並行して、その思想史的対抗軸としての福沢諭吉の研究も行った。その成果が、書評論文「」福沢諭吉における<社交>の精神と<教養>の秩序-西村稔著『福沢諭吉-国家理性と文明の道徳-』を読む」(『福沢諭吉年鑑』第34巻、2007年12月)である。 さらに、田口と福沢、両者の背景にある『明六雑誌』の分析へと進んだ。従来の『明六雑誌』研究は、不十分なものであり、政治と「市場」の関係を軸に再構成する余地が残されていると考えたためである。研究の過程で、『明六雑誌』寄稿者中、特に阪谷素に着目するに到った。彼の政治構想の中心には「租税」が据えられており、それは政治と「市場」との関係を巡る問いに対する一つの解答として捉えることができるからである。その成果が、博士学位論文『明六雑誌』の政治思想-阪谷素と「租税公共の政」」である。「租税公共の政」という概念を中心に据えたことで、『明六雑誌』と阪谷素の政治思想がより正確な形で明らかになった。
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