2006 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄幹細胞から免疫細胞への分化制御における分子基盤の解明
Project/Area Number |
06J10441
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水谷 龍明 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 細胞分化 / インターフェロン / 転写因子IRFファミリー / 免疫細胞 |
Research Abstract |
転写因子IRF-2の遣伝子欠損マウスのin vivo解析から、同マウスの新たな表現型として慢性的貧血症状が新たに見出された。マウス末梢血の血球算定から、野生型マウスに比べて赤血球数及びヘマトクリットの減弱が観察され、さらにMCV、MCH、MCHCの値は正常値であったために、同遺伝子欠損マウスの貧血症状は正球性正色素性貧血に分類されることがわかった。赤血球分化初期に形成されるBFU-e及びCFU-eの形成能を検討したところ、同遺伝子欠損骨髄細胞に異常は見られず、野生型骨髄細胞と同様のコロニー形成を示した。次に、同遺伝子欠損マウスの骨髄及び脾臓中の赤芽球分布をFACS解析したところ、Ter119high、CD71highであるところの正染性赤芽球の分化ステージにおいて、高頻度にアポトーシス細胞が観測された。従って、この赤芽球分化段階において分化・増殖機構が異常を示していることが示唆される結果を得た。赤芽球(Ter119high、CD71high細胞)の生存・増殖には、Bcl-xlの発現が重要であるとされている。そこで、同遺伝子欠損骨髄細胞におけるBcl-xlのmRNA発現量をRT-PCRで検討したところ、野生型骨髄細胞と比較して有意に減少していることが見出された。また、IRF-2はI型インターフェロン(I型IFN)シグナルの負の調節因子であり、実際に同遺伝子欠損マウス骨髄細胞において過剰なI型IFNシグナル(I型IFN誘導遺伝子であるPKR、OASの高いレベルの発現)が検出された。過剰なI型IFNによる細胞増殖現象はよく知られていることから、赤芽球の分化・増殖抑制に対してもI型IFNが関与していることが推察された。そこで、I型IFN受容体欠損マウスとIRF-2遺伝子欠損マウスとの両欠損マウスを作成し、赤芽球異常を観察したところ、正常に回復された。従って、I型IFNシグナル依存的に赤芽球分化抑制が起こっていることがin vivoの実験から明らかとなった。 現在のところ、I型IFNによるBcl-xL発現抑制の分子メカニズムに関する解析を行い、新たなIFNによる細胞分化抑制機構を明らかにしようとしている。
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