2006 Fiscal Year Annual Research Report
抗癒着性を特徴とする医療用組織接着ポリマーの分子設計と精密合成
Project/Area Number |
06J10482
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 美都奈 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | バイオマテリアル / 生体親和性 / リン脂質ポリマー / ハイドロゲル / 組織接着性 / 抗癒着特性 / 分子間相互作用 / 組織反応 |
Research Abstract |
軟組織への接着と癒着防止の両方を実現できるリン脂質ポリマーマテリアルの創製を最終目的としている。このマテリアルは水溶性リン脂質ポリマーを主成分とする2液から調製するハイドロゲルとした。1液は接着組織表面との共有結合形成により強く相互作用させた。さらに1液は、生体環境下で2液目と相互作用を行い、自発的組織化によりゲル化(固化)させた。2液目は固化した後、周辺組織との界面に生体適合性に優れたリン脂質モノマーユニットを配向させることにより癒着防止層を形成した。つまり全体として相分離構造により組織接着面と周辺組織との接触面で異なる性質が発現できた。ハイドロゲルとすることで周辺組織からの液性分子の供給は妨げられなかった。また、生体適合性に優れたリン脂質ポリマーを主成分とすることで、長期的にも炎症反応を防止し、損傷組織の治癒を促進することができた。生体組織表面に存在するタンパク質と共有結合を形成するモノマーユニットを、タンパク質との反応率や反応時間、生成物質の細胞毒性などの観点から選定した。接着を確実に達成するためには、マテリアルが適用箇所で固化することが不可欠であることがわかった。そこで、1層目に接着性ポリマーを塗布し、常温、常圧下で、ポリマー分子の相転移と自発的組織化により固化する2層目のポリマーの分子設計を行なった。温度、塩濃度、pHなどの外部環境変化に対応して分子凝集し自発的組織化形成反応を誘引するよう官能基、モノマーユニットを選択し、ポリマーの分子構造を設計した。具体的には、水素結合や静電相互作用によりゲル化するリン脂質ポリマーが有効であると結論できた。これらの結果から、ポリマーゲル中に生体軟組織と同程度の水分を含んでいても、流動することなく、また接着性ユニットが機能するという二つの条件を満たす分子構造の規定ができた。
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Research Products
(1 results)